【これからの健康と栄養を考えるシンポジウム】アンチエイジング・健康寿命の延長は遺伝子にあった!

健康や老化など生命の営みを設計する遺伝子。その働きを上手にコントロールする仕組みを食生活の面から考えようという市民公開講座「アンチエイジング・健康寿命の延長は遺伝子にあった!」(昭和大学、産経新聞社主催、フォーデイズ特別協賛)が、2月、大阪市内で開かれた。妊娠時の栄養摂取の大切さ、食事をおいしいと感じるためのノウハウ、長寿食材とは…最新の研究データに基づく“暮らしの知恵”が紹介され、超満員の会場を沸かせた。講座概要を報告する。

食卓で注意する習慣が忍耐力を育む

服部幸應氏

<はっとり・ゆきお>立教大学卒。昭和大学医学部博士課程修了。食育を通じた生活習慣病などの講演活動に取り組む。藍綬褒賞受賞。内閣府などの公職多数。

 私の学校は栄養士を育てるところで、病院にも指導に行くが、一般的に病院食って食欲が出ないですね。照明にも原因があると思っている。蛍光灯でしょう、赤いものが紫に見える、病人の青い顔が今にも死にそうに見える。その点、白熱球は温かく感じ、料理もおいしそうに見える。皆さん家に帰ったら蛍光灯を消してロウソクをつけてください。向き合う相手が10歳は若く見える(笑い)。
 視覚の次は嗅覚。うなぎ屋の前では脳が刺激され、トリプトファンという必須アミノ酸が分解され、セロトニンが出て、よだれがジワー。音も大事です。視覚、嗅覚、聴覚が一体になったときが最高。学校給食もそうです。
 12年ほど前にミス・ユニバースの審査員をやったことがある。グランプリを取る人は8頭身で、BMI(体重÷身長÷身長)は22前後でした。25を超えると肥満、18・5以下を痩せ。ところが、7、8年前から18・5以下でないと優勝しない。栄養失調者が優勝なんです。これは問題だと思ったら、4年ほど前にスペインのモデルクラブが、18・5以下はモデルとして認定しないことにした。翌年パリ、ロンドン、ニューヨークのモデルクラブも同じになった。日本はまだなんです。
 私は今、警視庁の仕事もしている。平成19年に通りがかりに刃物で刺す凶悪事件が30件ほど起きたが、実際は未遂が9051件。この件数は20年前の44倍だ。その原因は食卓で注意されなくなったからだと私は考えている。普段から注意されていると、人前ではピッとなる。そうすると周りから褒められ、親も子もうれしくなり、自然とピッとなる習慣が身に付いてくる。でも普段注意されなくて、たまたま注意されるとムカッときて事件を起こす。食を通じて注意しあえるような環境に作りかえたい。

視覚・嗅覚・聴覚を重視-おいしいと思う感性~ 食育の原点は感性を取り戻すこと~-

小川哲郎氏

<おがわ・てつお>1986年新潟大学大学院理学研究科修士課程修了。民間製薬会社、インディアナ大学医学部、獨協医科大学准教授などを経て現職。

 英国で、出生児の体重と68歳になった時点での血圧と耐糖能の関係について調べたデータがある。2・5㌔未満の低出生体重児はほかのグループに比べて血圧が高く、血糖をコントロールする能力(耐糖能)も劣っていた。またフィンランドの調査で2歳時にBMIが15以下と小さい場合、成人後に脳卒中にかかるリスクが15以上の集団より1・7倍も高かった。
 「小さく生まれて大きく育つのが良い」と言われてきたが、「大きく生まれ小さく育つ」方が高血圧、糖尿病、冠動脈心疾患にかかるリスクが半分以下とのデータも、フィンランドでの調査から明らかにされている。
 いずれも出生児の低体重は生活習慣病のリスクを高めるというデータ。もし妊婦さんが体型を気にしてカロリー制限したら子供に悪い影響が出るという警告だが、OECDの国際比較表で見ると、日本でこのような低出生体重児が増えており、気になるところだ。
グラフ また妊娠中の影響は世代を超えて孫にまで及ぶという動物実験でのリポートがある。胎児の組織内では遺伝子の働き方の調整が行われており、心臓や肝臓などを作る。この時期に低栄養だとメチル化という現象が起きて、遺伝子の発現が下がる。この遺伝子のメチル化自体も遺伝し、孫に及ぶわけだ。
 カロリー制限のように成人には良いと言っても、胎児や妊婦さんには悪いこともあるのだということを覚えておいてほしい。

昭和大学・細山田明義学長 私たちの体を構成している細胞は常に新しく生まれ変わり、古いものは死んでいく。どこかで新しい細胞が生まれなくなると、それが寿命が尽きたことになるわけです。ところが細胞が生まれ変わる間に、いろいろなストレスや病気で細胞が傷つき、その途中で生命が絶たれることがあります。
 今日のお話は、年を取っていくうえで健康寿命を維持するポイントは何か、その要因を遺伝子のレベルで解読する、最新の研究結果を発表してもらいます。
 若い状態のままで年を取れれば、こんなにうれしいことはありません。健康で楽しく、若いまま年老いていくことは、誰もが望むことです。そのためには何に気をつけ、食べ物などはどうしたら良いのか、講師の先生方に分かりやすく、丁寧に話してもらいます。