【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(8)会話情報学の第一人者、西田豊明氏が見るAIの世界 (1/5ページ)

2016.7.10 07:00

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏【拡大】

 京都大学教授で、人間同士のインタラクションを媒介し、社会知を増進する知能情報システムの設計・構築・応用・評価についての包括的な取り組みを会話情報学という括りで研究を行っている西田豊明を訪ねた。西田は、前回の人工知能ブームの時も含めて、ずっと第一線で活躍している人工知能研究者である。

「少数の原理で明快に説明できないものは難しい」

 1993年に出版された「グランドチャレンジ-人工知能の大いなる挑戦」(共立出版)は、第一線の人工知能研究者がコンピュータや人工知能の未来について語っており、そこで議論されているテーマは現在も継続して研究されているものが殆どである。出版されてからの年月を考えると人工知能研究の困難さを実感できる。西田は、その本の共同執筆者であり、人間と人工知能が共存する集合知の姿を「知識コミュニティ」として示している。

「人工知能はいろんな要素から成り立っています。世界各国には、アメリカのAAAI(Association for the Advancement of Artificial Intelligence)や日本のJSAI (The Japanese Society for Artificial Intelligence)といった人工知能専門の学会がありますが、そういうところで発表されてきた研究の一部分だけが、ロボットなどと結びつき、いま注目を浴びています」

 いま人工知能の一部と思われているかもしれないニューラルネットワークは、人工知能とは違う研究分野(だった)という認識が一般的である。

「今の状況は、少数の原理で明快に説明できる「易しい」問題は人工知能で実現出来ているが、そうでない「難しい」問題は出来ていないということ。この状況は昔からずっと変わっていません。一見難しい問題でもデータを集めれば少数の原理で解けるというのであれば本来は易しいのです。少数の原理をコンピュータ上で実行できるアルゴリズムとして実装し、データを処理すれば良いので易しいのです。他方、少数の原理に帰着できないものは、ソリューションの実装に膨大な時間がかかるので難しいです。囲碁でいえば、大量の対戦データを分析して、その中からある種のパターンを見つけ出し、それに従ってコンピュータに判断させます。話題のアルファ碁は、深層学習や強化学習を組み合わせた比較的少数の原理に基づいて、大量の棋譜からパターンを見つけるという手法をとったので、いい結果が出ました。これまでは、データが少なく、コンピュータパワーも弱かったったのでそれが出来なかったのです」

 「グランドチャレンジ」のテーマで唯一、現時点で達成されているものが囲碁や将棋といったゲーム分野である。

【プロフィル】西田豊明(にしだ・とよあき)

西田豊明(にしだ・とよあき)工学博士
京都大学教授
京都大学大学院情報学研究科 知能情報学専攻
JST-CREST「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」総括
日本学術会議連携会員
著書、共著書に「人工知能とは」(近代科学社)、「知の科学 社会知デザイン」(オーム社)などがある

「ロボカー(自動運転)は、もっと難しい。精選された人工的なルールで定義された囲碁の世界と異なり…」