【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(8)会話情報学の第一人者、西田豊明氏が見るAIの世界 (3/5ページ)

2016.7.10 07:00

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏【拡大】

「もう一つは、運転の隅々に至るまでは、価値あるデータが得られていないことです。データは沢山ないと意味のあるデータにならないし、正解かどうかわからないデータにはあまり価値がありません。今、成果がでているのは、おおむね正解データか、正解につながるデータを利用できる領域です。囲碁にしても、猫を見分けられる人工知能にしても、そうです。ロボカーについては、正解データが得られていない状況がたくさん残っています。多数のロボカーが走り出せば、いろいろな状況での正解データがたまってくると思います。2020年にロボカーを実現するという目標は良いターゲットだし、僕は実現できると思っています」

 さらに、今後どのように人工知能が普及していくのだろうか?

「従来の知識は人間が解釈し、実行しないと活用できなかったのですが、人工知能の時代になると、人間がいなくても、コンピュータだけで知識の実行ができるようになっていきます。高度な知識に関しては、人間が担当するという状況が暫く続くと思いますが、マニュアル化されているような業務については、どんどん人工知能に置き換わっていくと思います」

 人間と人工知能間のコミュニケーションはどうなっていくのだろうか?

「イライザと人工知能の違いは、人工知能は言葉の内容をある程度理解するが、イライザはまったく理解していないということ。今の人工知能のレベルでは難しいけど、将来的には人工知能は言葉を理解するようになります。ただし、理解にもレベルがあります。例えば、日本語として理解しているというのと、言っていることのつながりや理屈が把握できるということでは意味合いが違います。さらに、感覚として分かることは、理屈の理解よりももっと深い。現状の人工知能が言葉を理解するといっても浅いレベルです。殆どは人工無能の世界です。人間がうまく解釈してくれるので、見かけ上のコミュニケーションが成り立っています。人間が言っていることを感覚として理解する能力を人工知能に持たせるのは難しいですが、理屈として理解できるというレベルであれば、それほど遠くない将来に実現できると思っています」

 イライザ(ELIZA)は、1965年にジョセフ・アイゼンバウムによって開発された対話型の自然言語処理プログラムであり、現在の人工無脳の原型である。単純な仕組にも関わらず、当時、多くのユーザーがイライザに知性があると信じた。

「人工知能に言葉を理解させることを専門にしている研究者は少ない」