【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(8)会話情報学の第一人者、西田豊明氏が見るAIの世界 (4/5ページ)

2016.7.10 07:00

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏

工学博士、京都大学教授の西田豊明氏【拡大】

「人工知能に言葉を理解させることを専門にしている研究者は少ない。言葉の理解は、個別性が高く、いろんな事柄が複雑に絡み合っています。一般原理ではやっつけられないので、期待に応えられるレベルにはなかなか届きません。秘書ソフトが実現出来ていないことと同じで、地道な積み重ねがいるのです」

 人工知能とのコミュニケーションにはしばらくの間、大きな変化がないのかというとそうではなく会話プラットフォームサービスが発展していくという。確かに、今年に入り、マイクロソフト、グーグル、フェイスブックといったインターネットの巨人たちが相次いで会話プラットフォームサービスの本格展開を発表している。

「会話プラットフォーム上で活動する人工知能を作ることが今ちょっとしたブームにもなっています。人工無能のようなものや会話パターンや行動パターンを認識してコミュニケーションするような人工知能など様々なものが作られています。コミュニケーションの世界、ショートメッセージとかチャットとかのプロトコルを使う。その世界の中では、コミュニケーションで便利な機能が使えたり、楽しめたりするのであれば、相手が人間であるか人工知能であるかはあまり区別する必要がありません。会話プラットフォームはこれから伸びる領域です。これまでのbot機能のように単にユーザとおしゃべりをするだけなら用途は限られているのですが、会話を通じて、実際に買い物をしたり、旅行の予約ができたりできるようになってサービスの幅が広がると、格段に価値の高いものになりますので、アマゾン、Googleなどの大手情報企業は会話サービスの実現に力を注いでいます」

 西田の研究分野である「会話情報学」について、西田の研究室のサイトには次のように記載されている。

「会話情報学の研究はこれからの人工知能研究の重要な一つの流れとして位置づけることができる。これまでの人工知能研究では、人工システム単独の知能の研究が主流であった。マルチエージェントシステムの研究にしても、人工システム同士のインタラクションが主であり、人間との間のインタラクションはHAI (Human Agent Interaction)など違う分野の領域だと思われていた。しかし、そうした人工知能システムの能力が高まるにつれて、より多くのことを人間から深く学び、人間にも学んだことを丁寧に教えたり、サービスの対象となる人間や人間のグループの持つ複雑で変化していく意向をより的確に把握し、提供するサービスの内容を必要に応じて正確に説明できるようにするためのコミュニケーション知能の実現が必要になった。コミュニケーションでは、単に機能的な側面だけでなく、人間の情動といった、対象に関わる微妙で暗黙性が高いメタレベルの情報のやり取りや、共感の生成といった知能を超えた、心の領域に踏み込まないとうまくいかない」

「現在の人工知能は、コミュニケーション知能という点ではまだまだ能力が低いので…」