【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(9)メディア情報学の第一人者、美濃導彦氏が見るAIの世界 (1/4ページ)

2016.8.14 07:00

工学博士、京都大学学術情報メディアセンター教授の美濃導彦氏

工学博士、京都大学学術情報メディアセンター教授の美濃導彦氏【拡大】

 京都大学教授で、画像処理、パターン認識やマルチメディア情報処理等を研究しているが、それらを人工知能に発展させるのではなく、人間にサービスを提供するツールとしてとらえる立場で研究を展開している美濃導彦を訪ねた。スマートキッチン(ユーザー主導型調理支援システム)やスマートツーリズム(旅行者支援システム)等、消費者目線からしてもイメージしやすく、興味深い研究テーマに取り組んでいる。

「少し冷めた目で見ています」

 人工知能の研究で使われる技術に精通しつつも人工知能研究自体からは多少距離を置いているように見える美濃には現在の人工知能ブームがどのように映っているのだろうか?

「研究というものには波があります。人工知能は、これまで70年代の知識表現の時、ワトソンやディープラーニングの時と波が来ています。脳科学の研究がかなり進んだこと、集合知のように知識を作ることが出来るようになったことやディープラーニングのような技術も出てきたので、人工知能研究の環境はだいぶ整ってきていると思っています。ワトソンは、IBMは当初は人工知能と言っていなかったけど、最近は人工知能という言葉を使うようになってきています。ワトソンは、基本的には検索技術で、検索技術が進むと知能のようにみえるところも出てくるんです。知能と違うところは、ワトソンは同じことを聞かれたら、同じことを答えますが、知能は、状況に応じて答えを変えます。少し前になりますが、そういう研究をしないといけないと提言してプロジェクトを作りました。CREST(科学技術振興機構)で今も継続して研究されています」

 ブームが来たからと言って、喜んでばかりはいられない。それは歴史が語っている。

「人工知能の難しいところは、一般人がイメージしやすいというか、人間の話に近いと思っているので、ブームになると過度な期待感が生まれてしまうのです。そもそも、研究者や技術者が考えていることと一般人のイメージにはギャップがあるのですが、そういった期待に応えられないと、急速にブームが萎んでしまい、そして予算もつかないような状況になってしまうのです。そうではなく、着実に研究が進むような環境になってほしいと思っています」

【プロフィル】美濃導彦(みのう・みちひこ)

美濃導彦(みのう・みちひこ)工学博士
京都大学学術情報メディアセンター教授
京都大学情報環境機構 機構長
京都大学C.I.O.
著書、編著書に「画像処理論 -WEB情報を理解するための基礎知識-」(昭晃堂)、「情報メディア工学」(オーム社)などがある

現状の人工知能研究の進め方を認めつつも、何か物足りなさを感じているようだ