【人工知能はいま 専門家に学ぶ】(10)人工知能研究センター副研究センター長、麻生英樹氏が見るAIの世界 (1/5ページ)

2016.10.31 12:00

国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副研究センター長の麻生英樹氏

国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副研究センター長の麻生英樹氏【拡大】

 2015年5月に産業技術総合研究所に設立された人工知能研究センターの副研究センター長である麻生英樹を訪ねた。ニューラルネットワークからベイズ的な機械学習やデータ解析まで、一貫して、経験から学習する能力を持つ知的情報処理システム、広い意味での人工知能の研究に従事している。

「ヒントン先生は世界的にみてもかなりユニークな立ち位置です」

 これまで第一線で活躍されている研究者にインタビューをしてきたが、今回は第一線の研究者でありつつも、人工知能研究センターで副研究センター長を務める麻生に人工知能研究の現状を俯瞰的な視点で語ってもらった。

「人工知能の研究はしばらくの間、情報技術研究の中では端の方にいた感じでして、研究者の間では、好きな人がやっているんだよね、というような認識もあったと思います。実際、人工知能学会は情報処理学会に比べると規模がだいぶ小さいです。人工知能の研究者が個々に自身が興味を持った分野の研究をしていくという時代が結構長くありました」

 確かに、6月に開催された人工知能学会の全国大会に参加したが、人工知能の話題で世間が盛り上がっている割には、その規模が少し小さく感じた。

「しかしながら、世の中に技術が出ていくという段階になってくると、一人では出来ないことが増えます。例えば、アルファ碁は象徴的ですが、共著者がとても多いのです。ああいう風にチームを作らないと世界で戦ってゆきにくいという状況になっています」

 人工知能はその応用範囲も含めて、非常に研究領域が広い。分野はあるもののその境界線も曖昧になってきており、それぞれを独立して研究しているだけでは成果も出しづらくなっており、組織的な研究の推進が重要になっている。そういったことも鑑み、国をあげて人工知能研究センターの設立が相次いでいるのだろう。

「私の話を少しすると、最初はニューラルネットワークの研究をしました。人間が言葉を使ってコミュニケーション出来るのはどういう仕組みなのか、脳がどのように情報処理を行うのかに興味があったからです。ニューラルネットワークをやって、途中で、ベイズ的な機械学習やデータ解析とかの研究もしました。一貫して、データから学習するということをやってきています。その観点からすると、研究分野で壁を作るのではなくて、方法論が違っても目的が一緒であるならば、なるべく交流を持って研究を進めることが重要だと思っています。例えば、昔はパターン認識と人工知能は別々でしたが、そこにボーダーを設けることに意味はないと思うのです」

【プロフィル】麻生英樹(あそう・ひでき)

麻生英樹(あそう・ひでき)国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 副研究センター長
著書、共著書に「これからの強化学習」(森北出版)、「深層学習Deep Learning」(近代科学社)、「ニューラルネットワーク情報処理-コネクショニズム入門、あるいは柔らかな記号に向けて-」(産業図書)などがある

社会実装には異分野の研究機関との協力も欠かせない