実働1日17時間? シャープの猛烈社長、戴正呉氏 掟破りの言動で社内に激震

 
シャープの戴正呉社長=8月、堺市堺区(寺口純平撮影)

 経営再建中のシャープに台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業から社長として送り込まれた戴正呉氏が、刺激的な言動で社員を焚きつけている。頻繁に情報発信するだけでなく、他社との交渉内容を突然表に出すといった掟破りまでやってのけ、側近たちを慌てふためかせた。1日17時間働くとされ「有言実行」を宣言する戴社長。その流儀はシャープ社員にどこまで浸透するか。(石川有紀)

突然の談話発表

 「譲渡先と、(旧本社隣接の)田辺ビルを改めて取得する方向で一致した」

 戴社長は就任から1カ月過ぎた9月21日、2度目となる社員向けメッセージの中で突然発表した。

 経営再建の資金をやりくりするため、外部に売却された旧本社ビルと田辺ビル。旧本社ビルの買い戻し交渉は不調だったが、田辺ビルは研究開発拠点として活用する方向だ。

 A4用紙4枚にわたるメッセージには戴社長の執念がにじみ出ていた。伏線は、鴻海とシャープの買収契約を発表した4月の記者会見にある。

 戴社長はシャープ「第2の創業の地」である旧本社を買い戻したい、と発言した。しかし翌日の一部報道では「冗談交じりに」と片付けられたのだ。

 これに対し戴社長は社員向けメッセージで「シャープが業績予想の下方修正を繰り返すなど信頼を裏切ってきたため」と分析。悔しさをにじませつつ「有言実行」へ決意を新たにしたと記し、社員にも事業目標の達成を強く求めた。

激動の社長室

 メッセージ発表に慌てたのは、社長直轄で秘書や広報、渉外などを務める社長室の担当者たちだ。不動産の取得は財務、資産内容に影響するため「社員にだけ開示してはインサイダー情報になってしまう」(関係者)。東京証券取引所への適時開示発表文や報道向け発表文の作成に追われた。

 戴社長が就任した8月13日から約2カ月半。組織変更や設備投資関連の発表、報道内容に関するコメントまで、東証への適時開示案件は約20件に上った。プレスリリースを含めるとほぼ毎日のように発表案件がある状態だ。側近の社長室は“激動”のときを迎えている。

 戴社長は毎朝7時ごろ始動する。7時半からの会議も珍しくない鴻海で身についた習慣で、1日16時間働くとされる郭台銘会長よりも早く出勤するため17時間働くとも言われている。

 シャープ取締役から、社長室長となった橋本仁宏氏は「戴社長は会社のカルチャーを変えようとしている」と受け止めている。

後戻りはできない

 ビル買い戻しが注目を集めたが、メッセージの最後には、新たなコーポレート・スローガン「Be Original」も盛り込まれていた。「目指してる、未来がちがう」に代わるものだ。

 シャープは日本語訳をつけていないが、「独創的であれ」といったところだろうか。戴社長はメッセージで「シャープらしいオリジナリティーあふれる価値を実現していくことを約束する言葉」と説明する。

 鴻海傘下入りが決まる前の今年1月からスローガンを練っていたブランディングデザイン本部の大矢隆一本部長は「ブランド価値を高めるのには、10年くらいかかる。後戻りはできない」と話す。

 10月に千葉市で開かれたIT展示会「CEATEC JAPAN(シーテック・ジャパン)2016」では、赤い「SHARP」のロゴと白い「Be Original」の2つの看板を掲げた。そして、最新家電や8Kテレビを並べたブースの片隅に、液晶電卓などシャープが世界で初めて開発した製品の数々を展示した。

 ある幹部は「かつて『目の付けどころがシャープでしょ。』と世界初にこだわったシャープを取り戻そうということ」と受け止める。新スローガンとともに再び世界競争に挑むことになる。