「当社は不正はしない」と富士フイルム古森会長 買収合戦、キヤノンの手法に納得できず

 
インタビューに応じる富士フイルムHDの古森重隆会長兼CEO=11月29日、東京都港区

 医療事業を強化する富士フイルムは東芝メディカルシステムズの買収に名乗り出たが、キヤノンが公正取引委員会への事前届出なしに東芝から新株予約権という排他的権利を取得して買収に成功。不透明な買収手続きを強く批判した富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)に企業の競争と競争政策の在り方を聞いた。

 --東芝メディカルの買収合戦に敗れた6月、即座に批判コメントを出し、公取委の判断の曖昧さにも一石を投じた。

 「いまも見方は変わっていない。(事前届出制度という)独禁法の手続きをないがしろにしたやり方だ。皆、分かっていることだ。私どもはコメントを発表し、それ以上騒がなかったが、『法の下の平等』という原則に反していた」

 --企業間の競争はどうあるべきか

 「当社はオープン、クリア、フェアを行動方針に掲げ、不正やアンフェアなことはしないことに徹している。その意味で東芝メディカルの問題は不本意だった」

重要部材は国内生産

 --日本企業の国際競争力の実情をどうみるか

 「競争力がなくなり世界トップの座から落ちたのは電機だ。スマートフォンで出遅れ、半導体や液晶では設備投資が不十分だったため、韓国や中国に追い抜かれた。IT分野はアップル、グーグルなどにやられている。しかし、それは日本の産業全体の問題ではない。自動車は最強だ。当社の関連でも医療機器とかデジタルカメラは日本以外にないといえる。材料も電子機器も、重要な部材は全て日本企業が造っている。当社も世界を相手に進撃している」

 「一時期ほどの勝ち方ではなくなった1つの要因は通貨だ。円は115円ぐらいがフェアレートだが、この1年間は円高でたたきのめされた。われわれの海外売上高比率は60%強だが、海外で造って海外で売っても日本企業の決算発表は円建てだ。ドル建てなら当社は増益だ。日本経済が駄目なわけではない。世界はもっと悪い」

 --米大統領選でのトランプ氏の勝利で円安が進行し、為替は一息ついた

 「トランプ氏勝利の背景は製造業の衰退だ。米国が海外へ工場を移して米国人が職を失った。白人の中流階級が職業基盤を失っているのが状況だ」

将来への投資不可欠

 --米国の轍(てつ)を踏まないためにどうすればよいか

 「コモディティー(普及商品)の勝負ではかなわない。技術を生かした先端的で優秀な商品で勝負するしかない。技術力の蓄積があるし、その力はある。『ROE(株主資本利益率)経営』とよく言われるが、ROEを上げるには自己資本を減らすことだ。自己資本を減らすためには自社株買いや配当を払う。それは短期的に株を持つ人には良いかもしれない。だが、長期的な経営のためには、基礎技術や基盤技術を高め、将来に向けて投資しなければならない」(芳賀由明)