パナが社内公募で「ユニーク家電」開発 米展示会でお披露目へ 技術革新へアクセル踏む

 
社内公募事業で少量でも洗える高機能洗濯機の開発について会議するパナソニックグループの女性社員ら

 米国で3月に開かれる世界的規模のIT展示会に、パナソニックが家電関連の新規事業を出展する。社内初の公募で選ばれた事業アイデアはインテリアやヘルスケアとの融合などユニークなものばかり。世界の厳しい視線も浴び、大企業でも斬新な家電をスピーディーに開発できる社内風土につなげる狙いだ。

 パナソニックは昨年5月、家電領域を中心に新規事業の創出とそれらをリードする人材の育成を目指したプロジェクト、「ゲームチェンジャーカタパルト(GCカタパルト)」を立ち上げた。2025年に向けた中期経営計画を策定するなかで、今後の家電市場を支えるアイデアを育てるべく、若手からベテランまで志を共有する社員が集結した。

 きっかけは、深い危機感と反骨に似たチャレンジ精神だ。GCカタパルトの深田昌則代表は「社会の変革のスピードは速く、このままでは電機メーカーは追いつけない。けれども、技術革新は小回りのきくベンチャーでなくてもできるはずだ」と強調する。

 大勢の従業員がひそかに温めている斬新なアイデアを掘り起こし、社内の各部署で連携できれば、大企業の強みをむしろ生かせるのではないか。さらにあえて未完成のベータ版でも世に問い、必要ならば社外の企業や研究機関などのネットワークもどんどん活用。オープン・イノベーションでスピーディーな製品開発を目指す思惑もある。

 公募には44ものアイデアが寄せられ、経営幹部も審査に加わり、最終プレゼンテーションを経て8つのチームが選出された。

 たとえば、あるチームはテレビを絵画に似た感覚で鑑賞できる高級感あるインテリアとして提案。テレビは韓国企業などとの価格競争に苦しんでいるが、新たな付加価値をつけることでニーズを掘り起こす考えだ。

 また、別のチームは嚥下がしづらい高齢者のために食材を軟らかく調理できる「万能鍋」を提案した。糖尿病患者などのためにカロリーや糖質量を短時間で測定できる機器を開発したチームもあり、深田代表は「ヘルスケアや介護など社会で問題になっているテーマに、電機メーカーがテクノロジーで応えていく必要がある」と指摘する。

 さらにパナソニックは、展示会での発表というひとまずの「ゴール」も設定することで、開発者のモチベーションも上がる効果を期待する。今回出展するのは、3月に米テキサス州で開かれる「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)インタラクティブ」。映画や音楽も融合したユニークなIT展示会で、ITベンチャーの登竜門としても知られ、ツイッターもSXSWで注目され飛躍したことは有名だ。

 SXSWには、IT関係者はもちろん、研究者や起業家、投資家などさまざまな人間が足を運ぶ。それらの厳しい評価に出展者はさらされると同時に、多様な参加者のネットワークから革新的な製品やサービスが生まれることもある。イベントの認知度の高まりとともに、米国内外から大手企業の参加も増えてきた。

 これまで、パナソニックでは、社内の若手などがアイデアを出しても、採算性、実現性などから日の目を見ないことも少なくなかったという。だが、GCカタパルトの審査では、幹部からも「おもしろい」との声が上がり、経営陣も巻き込んで開発が後押しされる土壌が期待されそうだ。

 GCカタパルトの取り組みを通じ、深田代表は「ビジネスモデルを磨き上げ、事業アイデアを具体化とチャレンジの裾野を広げる活動を強化していきたい」としている。(柿内公輔)