史上最大級の大きさ実現 ガシャポン「ザク」が20万個以上売れている秘密

 
バンダイのガシャポン「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」が売れている(C)創通・サンライズ

≪バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。[土肥義則,ITmedia]≫

 ガシャポン(カプセルトイ)なのに、カプセルという“殻”を捨てた商品が売れている。バンダイの「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」(以下、ザク)である。

 ガシャポンといえば、自販機のレバーを回すとカプセルが出てくる。そして、その中にアイテムが入っている。「なに当たり前のこと言ってるの?」と思われたかもしれないが、この商品は違う。カプセルに入っていなくて、アイテムがそのまま出てくるのだ。保護用のシェルを外すと、中にはパーツがぎっしりと詰まっていて、そのパーツを組み替えると、ザクの頭部に変身するというものだ。

 ところで、なぜこの商品はカプセルの中に入っていないのか。答えは、サイズを追求したから。殻を排除したことで、ガシャポン史上最大級の大きさを実現したのだ。完成すると、前後の幅は約100ミリ、高さは約65ミリ(アンテナ除く)。500円玉の直径は26.5ミリなので、前後幅は500円玉4枚といったところ。

 規格外のザクを2月に発売したところ、約4万個を完売。異例の追加生産が決まり、海外を含めて20万個を再出荷した。価格は500円(税込み)とガシャポンとしては安くないのに、「機動戦士ガンダムファン(30~40代の男性)だけでなく、普段ガシャポンを購入していない層にも買っていただいた」(バンダイ)という。

 なぜカプセルを排除したザクは、多くの人の支持を集めたのか。また、どのようにして開発したのか。バンダイで商品開発を担当している松原大典さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。

商品開発、まず何を考えたのか

土肥: バンダイは1977年……いまから40年前にカプセルトイ市場に参入したそうですね。当時20円の機械が主流だったのにもかかわらず、100円機で参入したとか。当時、子どものお小遣いを考えると、ちょっと高く感じた人が多かったと思うのですが、その後、次々にヒット商品が生まれているんですよね。

 漫画『キン肉マン』に登場する超人の形を模したモノ……いわゆる“キン消し”を1983年に発売したところ、子どもたちの間で大ヒット。これまで418種類を発売していて、1億8000万個も売れているとか。このほかにも、ガンダム、アンパンマン、セーラームーンなどのシリーズが大ヒットしました。40年間の販売数をみると、34億590万個(2017年3月)。市場の約7割のシェアを獲得しているわけですが、今年の注目はなんといっても「ザク」ですよね。

 機動戦士ガンダムシリーズに登場する「ザク」の頭部を再現したモノになりますが、最大の特徴はカプセルを排除して、球状のまま出てくること。シェルを外すと、中にパーツが入っていて、それを組み替えるとザクの頭部ができあがる。500円という高価格にもかかわらず、用意していた4万個はすぐに完売。その後、再生産して約20万個を出荷したわけですが、消費者になにがウケたかというと、ザクという強烈なキャラのほかに、サイズの大きさ、驚きの仕掛けだと思うんですよね。このような商品をどのようにして企画したのでしょうか?

松原: これまでにはない新しいモノを企画するとき、何を考えるか。まず「どうすれば消費者を驚かせることができるのか」といったことを考えます。なぜ驚かせようと考えるのか。ガシャポンの場合、驚かせることができないと、「買ってみよう」「レバーを回してみよう」と思っていただけないんですよね。

 ザクの場合、何を考えたのか。「大きなサイズのモノを出せば、消費者は驚いてくれるのではないか」と考えました。でも、ガシャポンなのでサイズには限界があります。通常はカプセルの中に入れなければいけないのですが、カプセルよりも大きなモノをどのようにすれば出すことができるのか、といったところからスタートしました。

土肥: カプセルよりも大きなモノをつくるって、足し算・引き算の発想で考えると、実現不可能ですよね。その不可能をどのようにして可能にしたのでしょうか?

大きさだけでは満足させられない

松原: まず、頭の中で「こんな形はどうかなあ」「こんな風にすればいけるかなあ」と考えました。次に、試作品をつくりました。なぜ試作品をつくるかというと、実際につくってみないと球状の中に部品が入るかどうかが分からないから。

土肥: 設計の段階ではよく分からないので、実際につくってみると。

松原: はい。でもザクの場合、なかなかうまくいきませんでした。中に入れなければいけないパーツがどうしても入らなくて、はみ出てしまうんですよね。パーツが邪魔になるので、ある部品を右に移動させると、違う部品が邪魔になったり。そうした作業を繰り返したところ、ある日「これでいける!」と感じて、再び試作品をつくりました。でも、ダメ。中にパーツが入らなかったんです。

 通常であれば、原型をつくって修正を加えて、終了--。といった流れが多いのですが、ザクの場合は、最初からつくり直す作業が発生しました。部品の形状を変えたり、削ったり、向きを変えたり。2度目の試作品で完成すると思ったのですが、それでも中にパーツが入らなくて。

土肥: バンダイのガシャポンは月に30~40アイテム出ると聞きました。松原さんはザクの開発だけをしているわけではないですよね。それなのに開発に時間がかかったら、周囲から厳しい目があったのではないでしょうか? 通勤途中に「あの部品を前にもってきて、次にあの部品をちょっと曲げて……」といったことばかり考えていたとか。

松原: ご指摘のとおり、ザクのことばかり考えていました。発売日は決まっていたので、○月○日までには完成しなければいけないといった締め切りがありました。ああでもない、こうでもないと部品を組み替えながら「次、中に部品が入らなかったらヤバいぞ」とプレッシャーを感じながら開発していました。

土肥: で、完成した?

松原: 2度目もうまくいかなくて、3度目の試作品をつくりました。結果、中にすべてのパーツが入ったんですよ。

土肥: おめでとうございますー。で、完成?

松原: いえ、まだです。中にすべてのパーツが入ったので、当初予定していた大きいサイズのモノができました。でも、それだけでファンを満足させることはできません。驚かせるためにはどうすればいいのか。頭頂部とパイプ基部を開くようにしたほか、モノアイを左右に動かせるようにしました。

 なぜこのようなことをしたかというと、ガンダムの関連商品はたくさんあるから。例えば、プラモデルひとつとってもたくさんの商品が出ていますよね。そういった中で、どのようなギミックを搭載すれば、ファンの人たちに「新しい」と感じてもらえるのか。新しい要素があれば、多くの人は「欲しい」と感じるはず。というわけで、ガンダムファンに喜んでもらえるようにギミックを加えたほか、外装だけでなく内部のメカニック部分までディテールを再現しました。

「これはヒットする!」と思う瞬間

土肥: ガシャポンを開発するうえで、何か気をつけていることはあるのでしょうか?

松原: フィギュアの場合、3000~4000円ほどの商品が多いですよね。自分の好きなキャラを買って、満足する人が多い。しかし、ガシャポンの場合は違う。フィギュアと同じようなポーズだとなかなか満足してもらえないので、フィギュアで売っていないようなポーズをつくることがあります。あと、単価が安いので、シリーズモノをいくつか集めると何かの形になったり、カッコよくなったり、といった仕掛けをすることがありますね。

土肥: フィギュアで売っていないようなポーズをつくるということですが、ガシャポンの場合、単価が安いので「よし、このヘンなポーズでいこう!」といった感じで、新しいことに挑戦しやすいのでは?

松原: ですね。フィギュアを購入する人は、指名買いが多い。ガシャポンの場合も指名買いをする人はいますが、それほど多くはありません。通りすがりに「あ、おもしろそう」と感じて、購入する人が多いですね。というわけで、これまでにはなかった切り口であったり、これまでになかったキャラであったり、新しい要素をできるだけ取り入れるようにしています。そうしなければ、自販機の前でなかなか足を止めてもらえませんので。

土肥: 商品を開発していて、「これはイケる。絶対に売れる」と思う瞬間ってあるのでしょうか?

松原: 頭の中であれこれ考えて、いいアイデアが浮かんだときには「これはイケる。絶対に売れる」と思うんですよ。しかも、しょっちゅうそのように感じる。でも、それを形にしたとき「これは違う。難しい」と感じることも、しょっちゅうあるんですよね(涙)。

 頭の中であれこれ考えて、「これはイケる」と思って、試作品をつくってみる。しかし、平凡になっていたり、新しさがなかったり、そう感じたときには無理に商品化することはありません。そこで「何が足りないのか」「どんな要素を取り入れれば、新しく見えるのか」を考えて、設計段階から見直しています。ただ……。

土肥: ただ?

松原: 頭の中で「これはイケる。絶対に売れる」と思って、実際につくってみて「イケる!」と感じたときには、ヒットすることが多いですね。

「新しい」と感じてもらうために

土肥: 世の中には商品があふれていますよね。そうした中で、消費者に「新しい」と感じてもらえることって、かなり難しいのではないでしょうか。

松原: 難しいですね。頭の中で「これは新しい。斬新だ」と思っていても、ちょっと調べてみると、すでにどこかで使われていることが多い。でも、そこであきらめてしまうと、そこで終わってしまう。あるアイデアが浮かべば、それに合うようなアイデアを掛け合わせてみる。これがダメだったらこれで、1つがダメだったら2つで……といった具合に組み合わせることで、これまでになかった形になることがあるんです。

 新しいことをどうやれば生み出すことができるのか。お客さんをどうすれば驚かせることができるのか。そのためには、頻繁に「これとこれを組み合わせれば新しいモノが生まれるかもしれない」といったことを考えなければいけません。

土肥: 脳みそに汗をかいて、手足を動かして、ようやく商品が完成するわけですが、できてから「それはダメだよ~」と言われることはないですか。松原さんの場合、人気キャラクターを扱っているケースが多いですよね。ということは、版権を所有している会社から「このキャラをこんな風に変えてもらっちゃあ困るよ。ダメね」と言われたりしませんか?

松原: 実は……あるんです。

土肥: キャラクターには世界観のようなものがあるので、その枠を超えたモノをつくってしまうと、「NG」になりそうです。

松原: いきなり完成品を持っていって、「さあ、どうですか?」と言っても、NGになる可能性が高い。そうならないように、事前にこちらの意図をきちんとお伝えして、先方の声もきちんとお聞きして、開発を進めるようにしています。

土肥: ザクの場合、どうでしたか?

松原: 問題ありませんでした。これまでガンダムシリーズは何度もつくってきましたので、どこを超えるとダメ、どこまでだったら大丈夫といったことは理解していますので、その線を超えることはしません。

次のザクも

土肥: これからも新しいモノを出し続ける、驚くようなモノを出し続ける、その気持ちは変わりませんか?

松原: はい。以前は「ガシャポンは安いから、ちょっと買ってみるか」といったケースがあったのですが、最近はそうした買い方をする人は少なくなってきました。ガシャポンは硬貨を入れて、ハンドルを回すまでは何が出てくるのか分かりません。「自分はアレが欲しいなあ」と思っていても、実際には違うモノがでてくることも多い。そうしたケースで、「残念」と思われてはいけないんですよね。自分が欲しいと思ったモノとは違うけれど、「これはクオリティが高い。なかなかいいじゃないか」と感じてもらえるような商品を、私たちはつくり続けなければいけません。

土肥: でも、それって簡単ではないですよね。ガシャポンは単価が安いので、開発にそれほどお金をかけることができないのでは?

松原: そうなんですよ。2000~3000円の商品であれば、新しい技術を投入できるかもしれませんが、ガシャポンの場合、かなり限られた予算の中で、モノをつくらなければいけません。どこの業界でも予算は限られていると思いますが、この世界は単価が安いのでかなり制約を受けますね。

土肥: 新しい技術に頼るのは難しい中で、どうしているのですか?

松原: すでにある技術の中で、新しく見せる工夫をしなければいけません。サイズの制限やコストの制約がありますが、その一方で新しいことにチャレンジしなければいけません。

土肥: 現在、次のザクを考えているわけですね。また、私たちを驚かせてくれる?

松原: はい、お楽しみに。

(終わり)

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