有名メーカーの食品が半値以下 大人気の買い物サイトの秘密とは…社会貢献で一石二鳥

 
KURADASHIを立ち上げた関藤竜也さん。大量の食品廃棄を解決しようと起業した

 「高級そうめん、定価1万円が2690円に(73%引き)!」 こんなふうに、有名メーカーの食品が格安価格で買えてしまうお得なショッピングサイトが注目を集めている。その名も「KURADASHI(クラダシ)」。通常でも60%から80%の値引き、なかには96%オフなんて驚きの商品もある。あまりの安さに、「もしや偽造品?」と思われる方もいるかもしれないが、すべて正真正銘のメーカー正規品である。

▽登録ユーザーは4万人近くに

 冒頭のそうめんのほかにも、「イベリコ豚を使用した熟成生ハム、定価1万4000円が6800円に(51%引き)、食品コンテストで1位に輝いたエキストラバージンオリーブ油、定価1万800円が3960円に(63%引き)」といった格安商品も。

 ではなぜ、こんなに安く売れるのだろうか?

 実は出品されている商品は、すべて「余剰在庫」なのだ。賞味期限が間近に迫ったもの、季節商品、梱包にへこみなどのダメージがあるもの、パッケージリニュアル前の商品など、一般の流通ルートには出せないものである。とはいえ、中身は何の問題もない商品ばかり。ということで、節約したい消費者から大きな反響を呼んでいる。

 2015年2月にスタートしたKURADASHIは、現在、取引メーカーが350社、登録ユーザーが3万8000人を数え、急成長中。このサービスを立ち上げたグラウクス社長の関藤竜也さんに話を聞いた。

 「食品メーカーが抱える余剰在庫の行き先は、大別すると3通りになります。ディスカウントストアでの安売り、社内販売やファミリーセールなどのクローズドマーケットでの販売、そして廃棄です。価格比較サイトの出現によりディスカウンタールートでの販売に不都合をきたし、その上ここ数年でSNSが普及してクローズドマーケットの情報が一般に拡散してしまう傾向も加わり、メーカーも頭を悩ませています」

▽食品業界悩ます“3分の1ルール”

 余剰在庫の安売りは、買う側にはありがたいが、メーカーはブランド価値が崩れることを恐れて、どうしても廃棄の道を選んでしまう。また、ワインなど賞味期限が明記されていないものでも、保管には倉庫代がかかるので、早めに処分してしまうケースが少なくない。その結果、ますます廃棄量が増えてしまうという悪循環を辿っているのが現状である。

 日本国内で廃棄される食品は、年間623万トン(16年)にも上り、半分は一般家庭から、半分はメーカーなどの事業者から排出されている。

 大手商社で食品流通に携わっていた関藤さんは、こうした大量の廃棄食品を目の当たりにして、何とか減らすことはできないかと考え始めた。そしてこの問題に取り組むことを決意し、起業を決断したのである。

 「メーカーにとって怖いのは、品切れです。コンビニエンスストアを中心に小売店からの欠品ペナルティーを恐れ、そのため過剰気味に見込みで製造するのが当たり前になっています。食品業界には“3分の1ルール”という暗黙のルールがあるのですが、これは製造日から賞味期限までを3分割して、納入期限は製造日から3分の1まで、販売期限は製造日から3分の2までを限度としています。3分の2を過ぎると店頭では売れなくなってしまうのです。長年の習慣なので、すぐに廃止することは難しいのが実情です」

 KURADASHIを始めるにあたって、関藤さんは食品メーカーを一社一社訪問してプレゼンを続けてきた。ブランドイメージと市況に影響を及ぼさない、そんな都合の良いビジネスモデルが本当にあるのか、信用を勝ち取るまではなかなか事業が進まなかった。しかし、地道に説明し、不安を払拭できた結果、半年で100社の賛同を得るまでになったのである。

▽メーカーから商品を売り込んでくるケースも

 ユニークなのは、KURADASHIでは買い物で自動的に寄付ができることだ。商品ごとに支援金額が設定されており、購入時にユーザーの希望する社会活動団体に寄付される仕組みになっている(支援金は商品代金に含まれている)。余剰食品を買うことで、家計も節約できるし、誰かを助けることもできるわけだ。

 「社会貢献を行っていることで、お客様からも共感していただき、頑張ってくださいといったメッセージをいただきます。『これまでは売り場でケースの奥から牛乳を取っていたんですが、食品ロスにつながるのでやめます』という声もありました。応援の意味を込めて、月額324円がかかるプレミアム会員(送料無料)になってくださる方も多いです」

 大手メーカーにとっては、社会貢献という付加価値がつくことで、ブランドのイメージが毀損されず、CSR(企業の社会的責任)も果たせる。その上、悩みのタネだった廃棄コストもかからずに済む。また、中小メーカーの場合、商品を無償でサンプリングできるというメリットもあり、新規顧客獲得にもなる、なかなか秀逸なビジネスモデルになっている。

 現在は、認知度が高まり、メーカー側から逆に商品を売り込んでくるケースも増えている。そのため、食品だけではなく、サプリメントや栄養食品などの関連商品も販売をしている。

 食品廃棄の問題については、農林水産省も食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を立ち上げて、解決すべき問題として取り組んでいる。世界で8億もの人々が栄養不足の状態にありながら、一方では食品の3割は食べられずに廃棄されているのが、実情である。KURADASHIでの買い物は、そういった社会問題を消費者目線で考えてみるきっかけとなるに違いない。さらには、2020年、東京オリンピック・パラリンピックで日本が世界から注目される時、日本の食品ロス削減が、世界のお手本となることを望むばかりだ。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))

《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。

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