8Kと4K、区別つかず 先が見えた画素数競争 発想の転換必要

高論卓説
シャープが発売する世界初の8K対応液晶テレビ

 8Kテレビと4Kテレビを見比べる機会があった。フルハイビジョンテレビは2Kで、4Kは2Kの4倍、8Kはさらにその4倍の画素がある。従って8Kテレビは画面が4Kの4倍、2Kの16倍、高精細なのである。

 しかし8Kと4Kはぱっと見ても、それほど違いは分からなかった。「細かい字を虫眼鏡で見てください」と言われて、近づいて虫眼鏡を当てて見たら、なるほど違う。遠目にはともにつぶれているように見えたローマ字が、8Kでは読めた。

 8月末にシャープが、世界に先駆けて液晶の8Kテレビ・モニターを発売すると発表したときの体験である。同社が開発した約3300万画素の8Kテレビは美しい画像を映し出し、素晴らしい技術の成果である。

 だが、ふと思った。虫眼鏡で分かる差は、商品としてどのくらいの付加価値があるのだろうかと。売り出すのは70インチ型で、まず10月から中国で発売して、日本は12月からで想定小売価格は100万円前後という。

 「4Kの最初の投入価格が約80万円だったので、8Kの魅力を加味すれば、妥当な価格」と、喜多村和洋TVシステム事業本部副事業本部長は説明した。

 100万円で発売しても、内外の競合メーカーが遠からず追いかけて、たぶん激しい価格競争になるだろう。2K、4Kのテレビで繰り返されてきた。

 テレビは、ブラウン管時代とデジタル化した現在の薄型とでは、似て非なるものである。

 小学館の「戦後史年表」によると、1953年に白黒テレビの本放送が始まった。ちなみにその年、シャープが国産第1号の白黒テレビを発売した。カラーテレビの本放送開始は60年で、カラーテレビ、カー、クーラーの3Cが「新三種の神器」と言われたのが66年である。

 当時のブラウン管テレビは、憧れの家電で、持つことが一種のステータスシンボルだった。重厚な木製キャビネットのテレビもあり、居間を飾るインテリアでもあった。まさに「家電の王様」で、家電メーカーの看板商品といえた。

 現在の薄型のデジタルテレビは技術が平準化したため、同質化して差別化が難しい。消費者を引き付けるには画素数の競争になる。4Kテレビは2011年末から登場し、13年には世界的に市場が急拡大し始めたが、早くも業界は価格競争に入った。

 今や東京の量販店では、50型4Kテレビが店のポイントによる実質値引きも含めれば、税込み13万円台でも買える。有機ELの4Kテレビも1年前と比べて半値程度の30万円台の製品が出回っている。

 店頭を見ると、どれも外観は薄い黒枠で画面を縁取るデザインで、画質もほとんど同じ。メーカー名を隠したら、よほどのマニアでなければ区別できない。テレビは今や値段で勝負するコモディティ(日用品)である。

 4K、8Kの国内での本放送は18年からだが、その前に4Kテレビは早々と値下がりした。8Kも同じ道が予想され、画素数競争の先は見えている。

 圧倒的なシェアがないと、コモディティ化したテレビ単体では、高収益は期待できない。発想の転換が必要だ。シャープの西山博一取締役は「さまざまなシステムでの展開」も模索している。今やテレビを一つの構成要素と割り切り、ソフトも合わせた斬新な事業モデルを生み出すときではないか。

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【プロフィル】森一夫

 もり・かずお ジャーナリスト。早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は「日本の経営」(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。67歳。

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