かつては有数の酒どころ、堺市で日本酒造りの伝統を再び 消えた銘柄復活、新たな酒蔵も

 
バチカンで「金の鳩」を持つ益田美保さん(本人提供)

 かつて全国有数の酒どころとして知られた堺市で、伝統再興に向けた動きが相次いでいる。昨年は戦争で消えた銘柄が復活し、四十数年ぶりに新たな酒蔵もできた。関係者は「堺の日本酒文化をアピールできれば」と意気込んでいる。

 古墳や刃物、臨海工業地帯のイメージが強い堺市だが、明治時代には市内に100近くの酒造業者があったとされる。しかし、工業化が進むと酒造りに使う地下水が足りなくなり、太平洋戦争中の空襲で多くの業者が被害を受けたことなどから、1970年ごろを最後に造られなくなった。

 同市北区の百舌鳥八幡宮のお神酒として愛された銘柄「金の鳩」も空襲で酒蔵が焼失し途絶えたが、創業者のひ孫、益田美保さん(58)=イタリア在住=が昨年3月、販売を再開した。幼い頃、祖母らに「いずれ再建できれば」と言われていた益田さん。2014年の一時帰国の際、日本酒愛好家と意気投合したのを機に決意し、東京の酒造会社に醸造を頼んだ。

 イタリアで日本文化を紹介している益田さんは「日本大使館のパーティーで振る舞ったり、ローマ法王に献上したり。すっきりした味わいでイタリア料理によく合うと評判です」と胸を張る。

 少年時代を堺市で過ごした堺泉酒造(堺区)の西條裕三社長(75)が新しい酒蔵「利休蔵」を開いたのは15年3月。大阪府河内長野市の酒蔵の社長を引退した後、地元有志の後押しを受け、約10年の準備期間を経てチャレンジした。堺出身の茶人にちなんだ清酒「千利休」は穏やかな香りでキレが良いのが特徴。今年は一升瓶約1万本分を仕込む予定だ。地元のお祭りやイベントにも積極的に提供。西條さんは「着実に浸透している。今後は廃業した酒蔵の関係者と協力し、当時の銘柄を再現したい」と目を輝かせる。

 堺市西区でこうじなどを製造販売している「雨風」も、創業年にちなみ命名したどぶろく「一六八九」を昨年7月に発売。豊田実社長(60)は「みんなで機運を盛り上げたい」と話している。

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