応酬、紛糾なく会議を効率化 合意形成できる4つの質問

高論卓説

 企業向けに、リーダーシップスキルやビジネススキルを向上させるためのコンサルティングやトレーニングプログラムを実施している中で、「会議時間を短縮できないか」「会議での合意形成度合いを高められないか」という相談が月を経るごとに増えている。働き方改革を実現し、生産性向上を図るための取り組みの一つとして、会議にまつわる効率化を挙げている会社も少なくない。

 サポートをしている企業の現状を大別すると、合意形成できない会議は、紛糾型と見せ掛け合意型に分かれる。紛糾型は、議論が紛糾してしまい収拾がつかなくなるパターンだ。さらに、終盤紛糾型、中盤紛糾型、序盤紛糾型に分類しており、この順に合意形成できない確率が高い。

 見せ掛け合意型は、会議の最中では、異論や懸念は表面化しないが、参加者が腹落ちしておらず、会議で決定しても一向に、その決定事項が実行されないパターンだ。表面合意型、形式合意型、かいらい合意型にも分類しており、その場で実質合意ができないかいらい合意型は対応策が異なる。

 私は身に付けたいスキルをパーツ分解しコア(核)スキルを反復演習する分解スキル反復演習型能力開発プログラムにより、実践スキルの向上を図っている。紛糾型や見せ掛け合意型を解決するためのコアスキルは、トップダウンを強要しないということだ。

 問題事例を分解していくと、いずれも方針を強要している行動が随所に見られた。強要するから紛糾したり、見せ掛けの合意となったりする。そうであれば、強要することをやめてみればよい。さまざまな解決策を試してみたが、現時点で最も効果的な方法は、4つの質問だけで会議を進行する方法だ。4つの質問とは、「洗い上げ質問」「掘り下げ質問」「示唆質問」「まとめの質問」だ。

 例えば、方針説明が行われたら、進行役は、洗い上げ質問を繰り出す。「ただいま説明のあった方針に対して、気になる点はありませんか」「遠慮なく異論を挙げてください」という質問だ。1時間の会議で、10人の参加者であれば、15分で、異論や懸念は出尽くす。

 洗い上げ質問の次は、掘り下げ質問だ。「出された懸念の中で最も深刻なものはどれですか」「5つの異論の中で、どれから議論していきますか」という質問だ。仮に最も深刻な懸念が「その方針を実行するための人手が足りない」ということであれば、「○○という方法で△△部に依頼して、もし人手を確保できるのであれば、賛成ですか」というように、ある前提を置いて方向性を示唆し、同意確認する方法が示唆質問だ。

 そして、結論もトップダウンではなく、「それでは人手が確保できる前提で賛成ということでよろしいですか」というように質問でまとめる。この方法を紹介すると、よくあるリアクションが、「異論や懸念をいきなり洗い上げるなど、寝た子を起こすことにならないか」というものだ。実は、寝た子を起こすのは、異論や懸念を洗い上げるからではなく、異論や懸念に対してその都度応酬するからだ。洗い上げ質問では決して応酬しないで、洗い上げに専念する。応酬しないから紛糾しないのだ。

 質問だけで進行するから、発言しやすくなるので、見せ掛けの合意に陥ることが少なくなる。これまでトップダウンで方針を強要してきた組織ほど、この方法の効果が高い。今日のビジネスパーソンの参画意欲を刺激する有効な方法なのだ。

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【プロフィル】山口博

 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年8月にモチベーションファクターを設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に「チームを動かすファシリテーションのドリル」(扶桑社)。55歳。長野県出身。