朝倉染布 伝統技術生かした最新の超撥水風呂敷

群馬発 輝く
女性の活躍も目立つ、朝倉染布の工場=群馬県桐生市

 絹織物の街として長い歴史を持つ群馬県桐生市。朝倉染布は、織物の光沢を出す織物整理工場として1892(明治25)年にここで創業した。長年引き継がれてきた加工技術を駆使し、五輪で使われた競泳用水着やスポーツウエアの加工を行うが、自社ブランドを確立しようと、強みの撥水(はっすい)加工を生かして製作した超撥水風呂敷が人気だ。

 ◆多彩な加工法開発

 今年、創業125年を迎えた。朝倉織物整理工場と、白い布を後から染める染布工業が合併したのが現在の同社。戦時中は軍手などの軍需物資を国防色に染める事業を行っていたという。

 戦後、天然繊維からレーヨン、ポリエステルなどの合成繊維の加工に移行し、ストレッチ性のあるニットの染色や機能性加工を強みとする工場としてシェアを広げてきた。

 現在、スポーツウエア30%、遊泳用やフィットネス水着23%、競泳水着18%-などの割合で、材料生地の加工をしている。そのレパートリーは、撥水のほか、生地に直接柄などをプリントする「インクジェット加工」、主に水着に使う「耐塩素加工」、盗撮防止のための「赤外線吸収加工」など多種多様だ。中でも、撥水加工は朝倉染布の強み。布おむつを使っていた1980年代、撥水性があり、かつ通気性の良いおむつカバーを大手繊維メーカーと共同開発し、特許を取得したことに始まる。

 その後、次第に布おむつから紙おむつが使われるようになったが、撥水+通気性の良い技術は、競泳用や遊泳用の水着などに応用され、1980年代から五輪選手が着用した水着にもその技術が使われ、数々のメダル獲得に貢献してきた。

 だが、同社は競泳用水着と遊泳用などフィットネス水着加工の割合は全体の41%。以前は70%ほどを占めていたが、遊泳用水着の人気の落ち込みなどから徐々に減ってきたという。そこで、「マーケットの激しい変化に対応し、自社製品を-」との朝倉剛太郎社長(46)の思いから、超撥水の風呂敷が生まれた。

 社内にある研究室で、どの撥水剤がどの生地に合うのか、ひたすら試行錯誤し、通常は30回ほどの洗濯で撥水加工が失われるところ、「100回以上洗濯しても失われない」技術を開発。風呂敷文化に生かされている。

 ◆1000年の文化に革命

 2011年には「1000年を超える風呂敷文化に、撥水を加え、革命を起こした」としてグッドデザイン・中小企業庁長官賞を受賞した。現在、同社の風呂敷販売数は、年間3万枚ほど。持ち歩きやすさやデザインの良さなどから、人気を集めている。

 また、同社は、働きやすい会社としても特徴がある。社員の4割は女性。男性が働くイメージの強い工場内だが、製品の品質チェックなどをはじめ、女性の活躍が目立つ。朝倉社長は「女子だけ優遇するのは男子に不公平」との考えで、同社の“男女平等”を如実に表している。

 そのほか、有給休暇を1時間単位で取れるようにしたり、産休や育休も希望に合わせて少し長めに取得できるなど工夫しており、産休を取得した社員は全員が復職している。面談も年3回実施し、コミュニケーションを図っているといい、朝倉社長は「社員ともフレンドリーにやっていきたい」と風通しの良い職場を目指す。

 働きやすい職場作りに気を配り、桐生の伝統と日本の伝統を守りながら最新技術を追い求め、新たな市場を作り出している。(久保まりな)

                  ◇

【会社概要】朝倉染布

 ▽本社=群馬県桐生市浜松町1-13-24 ((電)0277・44・3171)

 ▽創業=1892年7月

 ▽資本金=3800万円

 ▽従業員=102人

 ▽売上高=約13億5000万円(2017年4月期)

 ▽事業内容=染色整理、インクジェットプリント、販売

                □ ■ □

 □朝倉剛太郎社長

 ■マーケットの変化に合わせ強み生かす

 --大学卒業後、なぜ商社に進んだのでしょうか

 「客商売をやりたかったので。当時社長だった父よりも強い何かを持って帰ってきたかったというのもあった。ただ、任されたのは経理。タイ赴任などを経て9年弱勤め、経理については父よりも強くなって帰ってきたと思っている。海外駐在も経験し、すごく勉強になった」

 --風呂敷にたどり着いたのは

 「マーケットの変化に合わせて、自社製品も出していかないとならないとの思いから。和の文化を生かし、当社の強みの撥水加工を使おうと考えた。技術はあっても、デザイン力には苦労し、風呂敷デザインは、飽きられないように公募している」

 --人気が出るまでに苦労したことは

 「初めての自社商品で、価格を決めるところからマーケティング、製造販売まで全て手探り。個人に売るのがいいのか、ネットショップがいいのか-など試行錯誤の繰り返しだった。やっと10年経って事業っぽくなってきた」

 --会社経営で大切にしてきたことは

 「いかに食いつないでいくか。もともと水着の染色加工が業務の大半を占めていたが、遊泳用水着の需要の落ち込みなどから水着は現在、全体の40%ほど。このようなマーケットの変化に対応しなければならず、風呂敷が生まれた」

 --今後の展開は

 「繊維業界は企業が少なくなっていくと思うので、既存の事業は大切にしつつ、加工業務の領域を広げていく。ビジネスシャツを加工するなどしており、どんどんジャンルを増やし、強みである撥水加工の技術も磨きたい」

 --改めて目標を

 「染色の技術を生かし、スポーツ業界などに役立っていきたい。現状は厳しいが、地域とともにしがみついていく」

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【プロフィル】朝倉剛太郎

 あさくら・ごうたろう 慶大卒。商社に入社し、タイ駐在の経験も。9年弱勤めて退社し、2002年に家業の朝倉染布に入社。07年から現職。46歳。群馬県出身。

                □ ■ □

 ≪イチ押し!≫

 ■10リットルの水を運べる「ながれ」

 超撥水風呂敷「ながれ」は、赤ちゃんのおむつカバーに使われていた撥水技術を発展させて生まれた。水が垂れると即座にはじき、布の上で丸々とした水玉ができる。96センチ四方の風呂敷で、10リットルの水をくんで運べるほどの撥水力を持つ。

 サイズは70センチ四方から96センチ四方、128センチ四方などがあり、生地は、定番の平織りをはじめ、和スタイルに合う「ちりめん」や、スカーフに使える「サテン」など多彩。柄は自社でデザインしたもののほかに、デザイナーからの公募で誕生したものもあり、生地、サイズなど合わせると計50種類以上ある。

 ただ物を包むだけではなく、折り方によって手持ちカバンになったり、肩掛けバッグになったりと、使い方も自由自在だ。

 「誰かにプレゼントするのにもいいんですよ」と朝倉社長。詳細は、ホームページ(www.nagare-furoshiki.com)で。

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