GPSも使いよう… 大学における軍事研究、難しい民生技術との線引き

高論卓説

 「戦争」だけが危険であると思い込み、「憲法」と同様に「配給」された「平和」という枕の上に眠りつづけた日本の戦後史というものも、「世界史的」「考察」を下してみるならば、ずいぶんと奇妙なものに違いない。

 これは都留文科大の新保祐司教授が産経新聞の『正論』(8月15日号)に記述した一節である。以下引用を続ける。「戦後のいわゆる進歩的文化人による特殊な『日本史的な、あまりに日本史的な』『考察』は、世界の現状からみれば、もう有効期限がとっくに切れているのであるが、日本では『意気の阻喪』による惰性で生き残っているのである」

 新保教授の文章を引用したのは、大学における軍事研究の論争を想起したからだ。大学および国の研究機関を対象にした防衛省の研究費制度ができて2年がたつ。そこでこれらの研究機関での軍事研究は許されるのか、という議論が横たわる。日本学術会議でも議論があり、大学内でも見解はまちまちである。

 だが、軍事技術として生まれた衛星利用測位システム(GPS)は広く民間で活用されている。軍事技術の研究は、単に軍事にとどまらず、その応用は私たちの生活向上にも役立つ例は枚挙にいとまがない。しかし、日本学術会議や多くの大学は、軍事研究とは関係を持つべきでないとする見解が根強くある。軍事研究の中には自衛のための研究もあろうが、これも認めないというのであれば、「学問の自由」「研究の自由」は守られないことになろう。

 大学は、あらゆる研究を認めるべきである。1950年に「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない決意の表明」を日本学術会議が決議して67年がたつ。当時の社会状況と学問の世界は現在と同様とは思えない。

 防衛省安全保障技術研究推進制度の予算額は、スタートした2015年度は3億円で16年度は6億円。17年度は約100億円である。採択された大学は15年度で4大学、16年度は5大学であった。今年度のように飛躍的に予算額が増額され、のどから手が出るほどに研究費を欲する大学の研究者にとっては、この制度を活用したくなるのは当然であろうが、大学によっては認めていないのだ。

 国連憲章にも明記されている自衛権、この安全保障に関わる自衛権のための研究も軍事研究とされ、大学が認可しないとなれば、日本の知的財産を放棄するに等しい。「野外で有機物を使って発電する超小型システム」(東工大)、「水中での高速移動を可能にする船体の摩擦抵抗低減技術」(北大)などの採択された研究例は、いずれも軍事技術にも用いられようが、必要な科学研究であることに異論を挟まないだろう。

 公募要領には、研究成果は原則公開であると明記され、研究成果を特定秘密保護法の特定秘密には指定しないと防衛省は明確にしている。「戦争」のための研究と決めつける大学は、民生技術開発に限るべきだと断じる。軍事技術と民生技術の境界線をどのようにして引くのか、理解に苦しむ。どんな技術であれ、運用次第では軍事技術となろう。

 時代や世界情勢に変化があれば、学問研究の分野も異なる。「平和」という枕の上に70年間も眠りつづけることのできた戦後史自体、異常であったのだと気づくべきであろう。

【プロフィル】松浪健四郎

 まつなみ・けんしろう 日体大理事長。日体大を経て東ミシガン大留学。日大院博士課程単位取得。学生時代はレスリング選手として全日本学生、全米選手権などのタイトルを獲得。アフガニスタン国立カブール大講師。専大教授から衆院議員3期。外務政務官、文部科学副大臣を歴任。2011年から現職。韓国龍仁大名誉博士。70歳。大阪府出身。

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