大手銀行やアップルも参戦! 競争が激化するモバイル個人間送金市場

 
若者に人気のベンモ。お金のやり取りの履歴が新たなコミュニケーションを生み出している

 友達数人で食事に行き、会計を締めてもらってからスマートフォンの電卓でひとりいくらかを計算する-こんな光景は今後もう、あまり見られなくなるかもしれない。

▽送金だけでなく集金もできる

 アメリカでは数年前から「ベンモ」というモバイル個人間送金サービスが、若者を中心に人気を集めている。先述したような場面の場合、若者の間では誰かがクレジットカードでまとめて支払って、あとからそれぞれがベンモで送金するということが日常的に行われている。

 こうした個人間送金サービスが急速に普及した背景には、アメリカがそもそも小切手・クレジットカード社会で、現金を持ち歩く習慣がないという事情もあるだろう。

 日本では個人間のお金のやり取りといえば現金だが、アメリカではちょっと高額になると、個人間でも小切手で支払うのはよくある話だ。そもそもアメリカでは100ドル札を受け取らない店がかなりあり、日常生活では50ドル札や100ドル札はまず使われない。また小切手だと郵送できるので、なかなか逢えない友人に立て替えてもらった場合などは、ほぼ確実に小切手を送ることになる。

 ベンモは現金や小切手で行っていた個人間の金銭のやり取りを、スマホのアプリで簡単に行えるようにしてくれたのだ。

 使い方はいたって簡単。アイフォーンならアップストアから、アンドロイドならグーグルプレイからアプリをダウンロードし、名前とメールアドレス、電話番号を入力してパスワードを設定、送金に使いたい銀行口座とデビットカードを登録するだけだ。さらに、ベンモは送金だけでなく集金機能も備えており、たとえば割り勘してまだ支払いのない相手に「払ってね」と請求することもできる。

 相手から受け取ったお金はベンモのアカウントにクレジットとして保管される。このお金は自分の銀行口座に移すのはもちろん、送金にも使うことができる。

▽ソーシャル機能も若者に人気

 またベンモが若者に人気のあるもうひとつの理由は、フェイスブックやツイッターなどのようなソーシャル機能を持っていることだろう。メインページには自分と友人とのお金のやり取り、また友人同士のお金のやり取りの情報(ただし、こちらは金額は表示されない)が流れてくる。お金を払ってもらったら「いいね!」を押したり、「ありがとう」とコメントしたりすることで、コミュニケーションツールとしても活用できるのが特徴だ。

 ベンモは2012年にブレインツリーが買収、2013年にオンライン決済大手ペイパルがブレインツリーを買収したため、現在はペイパル傘下にある。

 米ITニュースサイトのZDNet(ジーディーネット)によれば2017年第1四半期のベンモの取引高は68億ドルで、前年同期と比べると2倍以上に増えており、この数字を見てもベンモがどれだけ成長しているかがわかる。

▽アップルの参入が市場を変える?

 こうしたベンモの成功を受けて、アメリカでは、現在モバイルでの個人間送金サービス市場が急速に発展しつつある。

 バンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェース、シティバンクといったアメリカの主要銀行30行以上が今年6月に立ち上げた新たな決済サービス「ゼル」は、ベンモやもうひとつの人気個人間送金アプリ「スクエアキャッシュ」に対抗すべく、9月にモバイルアプリを公開した。

 ゼルのアプリにはベンモのようなソーシャル機能はないものの、ベンモではアカウントにクレジットとして入金したお金を銀行口座に移すのに最低でも24時間かかるが、ゼルではどの銀行の口座を使用している場合でも、数分で移動が完了するのが特長だ(つまりすぐに現金化できる)。また、ベンモは1週間にやり取りできる金額の上限が299.99ドル、スクエアキャッシュは250ドルなのに対し、ゼルでは1日2,500ドルまでやり取りできる。

 そして、新しい個人間のモバイル送金サービス開始を発表し、今注目を集めているのがアップルだ。アップルは9月に、アイフォーンやアイパッド向けの最新オペレーションソフトウェア「アイオーエス11」と、アップルウォッチ向けに「ウォッチオーエス4」を公開した。現時点ではまだ始まっていないが、秋からまずアメリカで、この2つのソフトウェアを搭載したアイフォーンとアップルウォッチについては、メッセージ経由でお金のやり取りが行えるようになることが発表されたのだ。

 同社のモバイル決済サービス「アップルペイ」で登録したデビットカードとクレジットカードで送金し、受け取ったお金はアップルペイキャッシュとして保管され、銀行口座に移したり送金に使えたりする仕組みはベンモと同じだ。

 メッセージ経由での個人間決済というと、フェイスブックがメッセージアプリ「メッセンジャー」経由のサービスを約2年前から提供しているほか、ペイパルがマイクロソフト傘下のスカイプアプリを通じて8月から提供開始、日本でもラインが「ラインペイ」を提供している。

 アップルはアイフォーンというプラットフォームを活かし、アップルペイを急速に普及させている。個人間送金サービスもアップルの参入により、大きく変わる可能性がある。現時点ではアメリカでの導入しか発表されていないが、アップルペイが徐々に世界各地へとサービスを拡大したのと同様、同社の個人間送金サービスもいずれは海外展開されるだろう。(岡 真由美/5時から作家塾(R))

 《5時から作家塾(R)》 1999年1月、著者デビュー志願者を支援することを目的に、書籍プロデューサー、ライター、ISEZE_BOOKへの書評寄稿者などから成るグループとして発足。その後、現在の代表である吉田克己の独立・起業に伴い、2002年4月にNPO法人化。現在は、Webサイトのコーナー企画、コンテンツ提供、原稿執筆など、編集ディレクター&ライター集団として活動中。