割高なのになぜ人気? 「ドミノ・ピザ」が再び急成長しているワケ

 
反響が大きかったドミノ・ピザの期間限定商品「クワトロ・乙女のマヨネーズ」

《「ドミノ・ピザ」が再び急成長している。宅配ピザ業界で首位に立つ「ピザーラ」を追い抜く勢いだが、なぜ好調なのだろうか。その理由は……。[長浜淳之介,ITmedia]》

 「ドミノ・ピザ」を展開するドミノ・ピザ ジャパンの業績が好調だ。2016年6月期の年商は334億円となっており、3年間で約1.5倍も伸びている。店舗数も11年に200店だったのが今年は500店(9月時点)と、6年間で約2.5倍に増加した。85年の創業時以来、再び急成長しているのだ。

 宅配ピザ業界では、フォーシーズが展開する「ピザーラ」(553店、16年6月末時点)に次ぐ2位の座にあるが、逆転して首位に立つ勢いだ。

 ピザといえば、11年よりワンコインピザの「ナポリス」を運営していた遠藤商事が今年4月に倒産したことが話題になった。

 ドミノ・ピザの約5分の1の価格に設定したナポリスは、消費者から拍手喝采を浴び、ピザ市場のシェアを大きく伸ばしていくと思われた。しかし、結果はナポリスの方が敗れ去り、平均で2000円以上もする割高なドミノ・ピザが躍進している。なぜだろうか。

 ドミノ・ピザ ジャパンの執行役員、富永朋信氏は「そもそも、ワンコインピザとドミノ・ピザでは利用の動機が異なる。ビジネスの土俵が違う」と語る。

 ドミノ・ピザは、家庭内のちょっとしたハレの日、“プチハレの日”のディナーで注文されるケースが多い。

 例えば、サッカー日本代表の試合を家族とテレビ観戦するときや、お母さんがなるべく手間暇をかけずに日曜日のごちそうを出したいときなどだ。ホームパーティーや会社の打ち上げ会などにも使われる。日本人はピザという食品に、非日常的なワクワク感を期待しているのだ。

 宅配ピザはお正月のおせちのような本格的なハレの日の食事でもなく、コンビニ飯のような気軽な日常食でもない、その中間のプチハレの日に強固な基盤を築いている。

 つまり、ナポリスは宅配ピザが創出した日本人の持つピザの華のあるイメージを変えられず、日常食にできずに惨敗したのだ。

 では、ドミノ・ピザは、その強固な基盤に加えて、どのような改革で成長軌道に乗ったのだろうか。

テイクアウトの売り上げを伸ばす

 その改革の1つが、テイクアウトの強化である。最近、ドミノ・ピザの看板が街角で目に付くようになってきた。今まで目立たない裏道や住宅街にあった店舗を、表通りに配置するように戦略を変えたためである。間口も注文カウンターも広く、明るく清潔な雰囲気づくりが奏功し、店頭で注文がしやすくなった。

 デリバリーは、家庭に居ながらアツアツのピザが届くので便利だが、コスト構造において足かせになる。ドライバーがバイクに乗って配達に行き、帰りは空の荷物で帰ってくる。この手間を考えれば、料金が割高にならざるを得ない。

 しかし、店頭に顧客が買いに来るテイクアウトとなると、足かせはなくなり、ぐっと安く提供することが可能になる。実際、同社では宅配だと1枚1800円するピザを、テイクアウトでは1000円で提供している。この他にも、1枚ピザを購入すると、もう1枚のピザが無料となる「BUY ONE GET ONE FREE!」という実質半額のサービスも実施。これが大好評となった。

 また、約3分の2の店舗で、キッチンの壁をガラス張りに改装した。店に入ると、ガラスの壁越しに店員がピザを作って焼く実演風景が見られるようになっており、エンターテインメント性も高めている。

 こうした施策の展開によって、テイクアウトの顧客が急増している。デリバリーに次ぐビジネスの柱に育ってきているのだ。

 さらに同社は早い段階から、Webから注文できるように顧客を誘導してきた。15年からは「LINE」と提携し、スマホで簡単に注文ができるようにしている(LINE経由の売り上げは開始から1年で2億円を超えた)。

 電話での注文では、どの生地を選ぶのか、トッピングはどうするのか、どこに届ければいいのか、全部スタッフが聞き出して、入力しなければならない。これが結構な手間で時間と人手がかかった。

 Webからの注文を増やすことで、省力化につながるほか、顧客データの蓄積が容易となるため、マーケティングにも生かせる。このようにテイクアウトの強化とWebからの注文増加が業績アップを支えている。

メニューも強化

 企画力が高い商品を出していることも、客から支持を得ている要因の1つだ。例えば年初では、冬の季節商品として、マヨネーズの総量を通常の“3倍”にした「クワトロ・漢(おとこ)のマヨネーズ」、ピンクの明太子マヨネーズが特徴の「クワトロ・乙女のマヨネーズ」、激辛の「クワトロ・鬼女のマヨネーズ」といった、3種のマヨネーズシリーズを販売。話題を集め、売り上げも好調だった。

 また、サイドメニューも強化。ハンバーガーにはフライドポテトやチキンナゲット、ドリンクというセットの組み合わせで一食という感覚があるが、ピザにはそうした感覚が浸透していなかった。そこで、ポテト、チキン、サラダ、スープといったサイドメニューを強化して、ピザとセットで注文してもらうチャレンジを続けている。

 サイドメニューの商品力も高い。今年7月には、従来「ホットサブ」という商品名で販売していたピザの具材が入った、ホットドッグ感覚のサンドイッチを「ピザサンド」とリポジションして販売。これは、1人ではピザ1枚を食べ切れない女性を意識した強化商品である。

 こうした特徴的な商品の開発を矢継ぎ早に行い、他社と横並びの状況から抜け出す戦略を進めている。テイクアウトの強化と、ユニークな商品開発力で新需要を開拓し続けるドミノ・ピザは、今後もさらなる成長が期待できそうだ。

■著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ):兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。

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