100%植物由来の生分解性プラスチック

eco最前線を聞く

 □バイオワークス・今井行弘社長

 サトウキビやトウモロコシなどが材料として使用される植物由来のプラスチック。生分解性プラスチックと呼ばれることもあるが、実はほとんどが石油由来成分との混合品だ。こうした中、環境ベンチャーのバイオワークス(東京都渋谷区)は独自技術により、100%植物由来のプラスチック「ポリ乳酸」を生成することに成功した。今井行弘社長にその特長や今後の展望などを聞いた。

 ◆独自添加剤で脆弱性解決

 --ポリ乳酸とは

 「植物を原料とするプラスチックの中で、エチレンなどからではなく乳酸から合成されたプラスチックのことを指す。実は20年以上前から存在しており、専門化学商社の長瀬産業でプラスチックを担当していたときからバイオ系プラスチックは将来性があると感じていた。ただ、その当時は成型や量産が難しいなどの課題を抱えていた。各素材メーカーもポリ乳酸の開発に挑んだが、結局どこも成功に至らなかった。他のプラスチック原料よりも耐熱性や耐衝撃性が低く、物性レベルでの脆弱(ぜいじゃく)性が製品化への大きな壁となっていたのだ」

 --それが起業のきっかけにつながる

 「神戸大と京大、大阪大の教授による分子レベルの素材の結合、合成方法に関する研究成果を活用し、2004年10月に阪大を拠点とする研究開発型ベンチャー企業として、前身となる『バイオベース』を設立した。08年度の近畿経済産業局の委託事業が採択されたのを受け、ポリ乳酸に混ぜる独自の添加剤を開発した」

 --添加剤の役割は

 「ポリ乳酸を基に植物由来の成分を複数種類配合したもので、ポリ乳酸の結晶化速度を高めるだけではなく柔軟性、耐熱性、耐衝撃性をも向上させる。また結晶化速度が上がったことで、ポリ乳酸のナチュラルなものに比べると10~20倍もの生産性が向上した。添加剤は成型のために使い、ポリ乳酸の量の5%程度の量が目安となる」

 --主成分のポリ乳酸も添加剤も植物由来。だから100%植物由来のプラスチックが完成した

 「生分解性のため、一定の条件であれば分解する。具体的には、温度と湿度とpH(酸アルカリ度)によって加水分解が始まり、その後は菌によって生分解される。強アルカリ、酸の環境下で条件がそろえばおよそ1週間程度で水と二酸化炭素(CO2)になる。家庭用の生ゴミ処理機で簡単に分解できるプラスチックともいえる」

 ◆今後は実用化へ実証実験

 --ものづくりのベンチャー企業は「事業化への大きな壁」に直面しがちだが

 「どんな用途に使えるのか、実際に飲料用のボトルなどに成型して使ってもらおうと実証試験を試みたが、それをできるだけの企業体力がバイオベースでは不足していた。そこでバイオベースの事業を発展的に解消し、事業化を目指す会社として、バイオワークスを15年10月に立ち上げた」

 --社会性にも意義が高い事業という理由で、関心も高まっているようだ

 「昨年の11月、阪大のベンチャーキャピタルが運営するベンチャーファンド(基金)から1億円の出資を受けた。半分は資本準備金に組み入れ、残りは製品化の開発や実証試験などにあてる。100%天然素材のバイオプラスチックを少しでも多くの人に知ってもらい、使っていただくことで、プラスチックごみの低減につなげ、石油の使用を少しでも減らすことに貢献したい」(松村信仁)

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【プロフィル】今井行弘

 いまい・ゆきひろ 神戸商科大(現兵庫県立大)商経学部経営学科卒。1979年長瀬産業入社、合成樹脂や工業材料の営業担当などを経て、2010年協和入社。14年同社を退社。15年バイオワークスを設立し社長に就く。61歳。大阪府出身。

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