豪雨と温暖化 放置人工林活用で森林再生急げ

高論卓説

 夏になると記録的豪雨による水害が、毎年のように列島を襲う。2012年の九州北部豪雨、14年の広島土砂災害、15年の関東・東北豪雨、そして今夏も九州北部を豪雨が襲った。河川の氾濫や土砂崩れなどで被害は甚大だった。豪雨の原因として地球温暖化に伴う海面温度の上昇が関係していると指摘される。今夏の九州北部豪雨では、流木が土砂とともに押し寄せ、民家を壊すなど被害を拡大させた。

 針葉樹で覆われた山肌が木々とともに崩れたのは、“観測史上最多”を記録した雨量のせいだけでもないようだ。わが国は国土の66%が森林。人が植栽した人工林がその4割を占める。今、問題なのは間伐などの手入れがない放置人工林が増えていることである。放置人工林の木々はしっかりと根が張っていないため、管理された人工林と比べると保水力は小さく、洪水を緩和する機能も弱い。このためか、山肌の表層部が木々を巻き込み崩れる現象も起こりやすい。

 また、間伐しないと、日光が遮られるためコケも生えず、生物多様性に影響を及ぼす。収穫の秋を迎えているが、本来は警戒心の強いイノシシやツキノワグマが人里に下りてくるのは、森が痩せて食料がなくなっているのも一因だろう。

 一方、昨夏に関東圏は深刻な渇水に直面した。これに対し、今夏は渇水にはならなかった。違いは、冬場の降雪量にあった。

 上越国境の山間部は、日本でも有数の豪雪地帯だ。「山に降った雪は春になって溶けるまで、雪の形で水をためている。雨は水なので川から海へと、すぐに流れてしまうのとは違う。地球温暖化が進むと雨が増え、降雪は減っていく」(サントリーグローバルイノベーションセンター水科学研究所)

 シベリアの冬将軍により大量に降った雪は、春になるとゆっくりと解けていく。この形を維持したい。だが、地球温暖化の進行により、降雪、積雪ともに減少し、融雪も早くなっていくと、夏場の渇水は常態化していく可能性は否めない。

 降雨が増え降雪が減れば、水源地の涵養力は低下し、田んぼの水張りにも影響を与える。群馬のダムにしても、そもそもが一定の降雪を前提に設計されている。また、雪解け水の一部は地下に浸透し地下水となるが、涵養機能を支える一つは整備された森林でもある。

 温暖化防止の枠組みであるパリ協定では、森林を活用した温室効果ガスの排出削減にも言及している。温室効果ガス排出量について日本は、2030年度までに13年度比で26%の削減を目標としていて、このうち2.0%分を森林による二酸化炭素(CO2)吸収で賄っていく計画だ。

 間伐材は循環型資源でもある。スギやヒノキを「硬く」「柔らか」な圧縮木材にすれば、住宅の床材や家具材に転用できるから。木材加工と金属加工とのオープンイノベーションなどで、木の潜在力をもっと探っていきたい。間伐を促進できれば、放置人工林を減らせて温暖化防止にも役に立つ。

 夏場、ある地域を豪雨が襲い、別の地域は渇水に陥る事態を、繰り返させてはならない。森林の再生を、まずは急ぐべきだ。

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【プロフィル】永井隆

 ながい・たかし ジャーナリスト。明大卒。東京タイムズ記者を経て1992年からフリー。著書は「アサヒビール 30年目の逆襲」「サントリー対キリン」など多数。59歳。群馬県出身。