東芝迷走に拍車かけた経産省の介入 国頼みの体質、経営再建に影

 

 【東芝 薄氷の再建】(下)

 「作戦通りにはならなかったな」

 9月20日の取締役会を前に、東芝から半導体子会社「東芝メモリ」の売却先が「日米韓連合」に決まったことを伝えられた経済産業省幹部は、ため息を漏らした。

 社長交代ほのめかし

 経産省は売却交渉の最終局面で、東芝の提携先、米ウエスタン・デジタル(WD)が加わる「日米連合」を推した。昨年のシャープの支援でも、後押しした傘下の官民ファンド、産業革新機構が台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に競り負けており、2連敗。東芝メモリでは日本勢が議決権の過半を抑えるため、「結果オーライだ」と取り繕うが、じくじたる思いもにじむ。

 経産省は一貫して東芝の売却交渉に介入してきた。6月に産業革新機構を軸とした「日米韓連合」を急造して買い手に立候補させ、優先交渉先とすることに成功した。しかし、WDとの係争リスクを抱えて8月上旬に交渉が頓挫すると、今度はWDを取り込んだ「日米連合」づくりに動いた。

 「うちにはタフネゴシエーターがいたっていうことだよ」。経産省幹部は東芝が8月中旬に方針転換し、日米連合に交渉が進み始めると饒舌(じょうぜつ)にこう語った。

 キーマンとなったのは、7月の省内人事で新たに就任した寺沢達也商務情報政策局長だ。英語が堪能で、交渉では食いついたら離さない“ハウンドドック”との異名を持つ。WDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)と渡り合い、譲歩を引き出したことが、膠着(こうちゃく)した事態を打開した。

 「今のトップは暫定だ。ぜひ、斬新な人事をやってほしい」。経産省幹部は、東芝メモリ社長を兼務する成毛康雄副社長がWDに強い拒否感を示していたことから、社長交代までほのめかしていた。

 ところが、誤算が生じる。8月末の詰めの協議でWDが過剰な権益拡大を求め、東芝の不信感を増幅させた。ほぼ同時期に日米韓連合側が買収総額の積み増しなど破格の条件を示すと、流れは再び日米韓連合に傾いた。

 経産省幹部は「われわれは一貫して、技術流出の防止と雇用の確保だけは譲れないと言い続けてきた」と語る。売却交渉に深く関与したのは、売却先によっては国益が損なわれる懸念があったからだ。買収提示額の高かった鴻海が、候補から外れたのもそのためだ。

 結果的に、こうした介入が東芝の選択肢を狭めて交渉を困難にし、売却交渉が迷走した。

 債務超過解消道険し

 一方で、未曽有の危機に際し、東芝が政府にすがったのも事実だ。革新機構幹部は「うちが動いたのは、そもそも4月に綱川智社長に頼まれたからだ」と振り返る。

 日米韓連合による買収では、革新機構と日本政策投資銀行はWDとの係争が解決してから資本参加する。その両社に東芝が当初から議決権行使を指図できる「指図権」を付与したのは、出資までつなぎ止めておきたいからだ。

 ようやく売却契約にこぎ着けた東芝だが、海外当局による独占禁止法審査に半年以上かかる可能性がある。上場維持に欠かせない債務超過の解消を来年3月末までに実現できるかは疑わしく、経産省幹部は「間に合わない場合も対策はある。金をつなげばいい」と語る。

 次善の策には東芝本体への資本増強策などが想定されるが、市場の信用がない東芝が自力で資金を調達するのは困難だ。国頼みの東芝の体質が、今後の経営再建にも影を落としている。

 この連載は、万福博之、井田通人、柳原一哉が担当しました。

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