丸二 「京からかみ」壁紙など内装材で需要拡大

京都発 輝く
体験施設「唐丸」で京からかみを製作する様子を見せる丸二の関係者ら=8月、京都市下京区

 京都の伝統工芸の一つ「京からかみ」を製造・販売する丸二(京都市下京区)。古くは江戸後期の天保年間から使われる版木約300種余りを使い、従来のふすまの障子だけでなく、インテリア製品などを開発することで、新たな住環境の内装材として提案を進めている。8月末には、京からかみの魅力を知ってもらい、製造体験もできる施設「唐丸」を本社隣に開業。千年の都に伝わる京からかみの魅力を国内外の観光客に発信し、新たな需要拡大を目指している。

 ◆体験施設「唐丸」開業

 「京からかみ」は、平安時代から中国・唐の技術を国産化した版画の一種。文様を手彫りした版木に貝や海藻など自然由来の塗料を塗り、上に置いた紙を手のひらでこすって1枚ずつ印刷する。主にふすまの障子紙として使われ、当初は貴族らが使っていたが、江戸時代からは町民ら庶民にも広がった。

 「京からかみを伝える業者は京都市内でも2社だけ。塗料の臭い、そして紙の風合い。これが魅力でしょう」

 1902(明治35)年創業という丸二の西村和紀社長は、京からかみの事業展開に誇りを示す。

 そんな丸二が新たな需要開拓に欠かせぬ戦略として今年8月に開業したのが体験施設「唐丸」。京からかみを実際に作る版木を使い、参加者が職人らから教えてもらいながらふすま絵やポストカードを実際に作れるようにした(有料、予約必要)。京からかみを知って、体験し、楽しめる場というのが基本コンセプトだ。

 こうした事業計画は昨年、京都商工会議所が力を入れる「知恵ビジネスプラン」に認定された。西村社長は「新たな京からかみの魅力発信につながった」と一定の手応えをつかんだ。

 一方で、ビジネス面では課題も多い。まずは需要の開拓だ。西村社長は「日本の住宅も和室が減ったことで、ふすまの紙としての需要は激減する一方」と危惧する。ただ、洋室の壁紙などの内装材として提案していくことで、京都市内の高級ホテルで採用される動きも出てきた。

 少子高齢化や人手不足による製造面の不安もポイントだ。京からかみの製造は従来、外部の職人に製造を委託してきたが、約4年前にハローワークを通じて職人になりたいと希望する30代の2人を採用。製造部門の内製化を少しずつ始めている。2人に職人から技術を引き継ぐ修業をさせることで、京からかみの製造を当面は安定化させたい考えだ。

 ◆ITでコストダウン

 コストの高さも悩みの種だ。京からかみの壁紙は1平方メートル当たり約1万円。海外に輸出すると経費はさらにかさみ、例えばパリで販売しようとなると同約3万円へ跳ね上がる。

 そこで考えたのがITの活用。古くなれば使えなくなる版木の文様をスキャンしてパソコンに取り込み、データベース化する。昔の版木を作りやすくすることで、コストダウンにつなげる狙いがある。

 また、西村社長は京からかみを紙以外にも転用することで新たな需要を掘り起こせないかと考えている。「紙も大事にしたいが、布やガラスに版木を使って印刷するなど、次世代の京からかみの開発も考えている」

 職人の伝統の技は残しつつ、最新技術も使って商品を進化させ、用途拡大を探る。丸二の新たな挑戦は始まったばかりだ。(西川博明)

                  ◇

【会社概要】丸二

 ▽本社=京都市下京区高辻通堺町東入ル泉正寺町462 ((電)075・361・1321)

 ▽創業=1902(明治35)年

 ▽会社設立=83(昭和58)年

 ▽資本金=1000万円(2017年9月末現在)

 ▽従業員=15人(同、パート・バイト含む)

 ▽売上高=約3億9000万円(16年12月期)

 ▽事業内容=京からかみの製造・販売および内装材料の卸販売・施工

 □西村和紀社長

 ■職人の技術融合で新たな商品開発

 --家業を継いだきっかけは

 「25、26歳のころ、祖父の社葬の時に、位牌(いはい)を持たされ、僕は家業を継ぐ運命なのかと気づいた。社長就任は父と叔父の取り決めで、僕が40歳になったときに就任することになった」

 --京からかみの魅力とは何か

 「原点は京都にあり、江戸時代には文様が琳派の影響を受けている。京都の文化が生んだ、伝統工芸といえる」

 --製造で心がけている点は

 「昔から使ってきた版木を大事にし、昔からの技法や材料で作り上げている。最近は海外の日本ブームもあり、ふすま以外にも使われるようになったことで、京からかみの売り上げは増えつつある」

 --新たな需要をどこに求めるのか

 「壁紙やインテリアとして活用が増えてきている。ただ、京からかみの塗料は水性で、外装には使えず、室内の装飾・インテリアに用途が限られる」

 --8月26日に体験施設「唐丸」を開業した。手応えは

 「京からかみの魅力や当社の名前を知ってもらう機会としては成功したが、まだ道半ば。ビジネスとしてどう展開できるか。海外からの観光客に京からかみの製造を体験してもらえるように、英語対応を早急に進めなければならないと思う」

 --経営の基本戦略は

 「ふすまの需要が激減し、経営面では次の収益の柱を立てないといけない。京都で2社のみが展開する京からかみは特異な素材として競争力があり、事業として今後も伸びしろはあるとみている」

 --今後の目標は

 「僕らの任務は京からかみの需要を高めること。異業種の方々が興味を持つよう、新たなライフスタイル(生活様式)に提案し、京都の中で職人さん同士の技術を融合させた商品もつくれないかと考えている」

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【プロフィル】西村和紀

 にしむら・かずのり 同志社大文卒。建材メーカーのINAX(現LIXIL)で営業マンをつとめた後、1993年丸二に入社。営業担当などを経て、2007年12月から現職。49歳。京都府出身。

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 ≪イチ押し!≫

 ■体験キットやスタンプ売れ筋に

 丸二の京からかみの体験施設「唐丸」では女性の来訪者が増えており、関心を持ってもらおうと関連グッズの販売コーナーを設けている。

 売れ筋は、自宅でも気軽に京からかみを体験できる「スタンプ(はんこ)」(1350円から)や「体験キット」(2万7360円)。平安貴族は手紙や詩歌をたしなむ際に京からかみを使ったとされ、同社はこうしたグッズを通じ「京からかみの醍醐味(だいごみ)を知ってもらえるし、年賀状に使っていただくのもおすすめしたい」という。

 新たな用途として開発したインテリア商品が「ウォールパネル」(1万1664円)。光の陰影伝統の文様を立体的に表現する。一般消費者だけでなく、設計士やデザイナーらが飲食店などに飾る目的で、まとめて購入するケースもあるという。

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