地熱発電、にわかに脚光 副産物「温水」が地域振興に一役

高論卓説

 再生可能エネルギーのうち、天候に左右されず、安定的かつ長期に発電できる地熱発電が、にわかに脚光を浴びている。設備更新が決まった宮城県大崎市の鬼首(おにこうべ)地熱発電所、秋田県湯沢市で安定して発電する上(うえ)の岱(たい)地熱発電所、同市で2019年の運転開始に向け着工した山葵沢(わさびざわ)地熱発電所を訪ねた。

 110もの活火山を擁する日本列島。火山の下にはマグマたまりがあり、岩石や水を熱して高温の蒸気と熱水を閉じこめた地熱貯留層をつくることがある。地熱発電では、地下1キロ~数キロに広がる地熱貯留層へ井戸を掘り、高温高圧の蒸気と熱水を得る。蒸気はタービンを回して発電し、熱水は別の井戸から地下の貯留層へ返す。

 日本の地熱資源は世界3位の2万3470メガワット。ところが、発電設備容量は544メガワット(15年)で、2%しか開発されていない。約8割が国立・国定公園内にあり、開発が規制されてきたためだ。

 環境省は12年、国立・国定公園内での地熱開発について、第2種、第3種特別地域内でも条件を満たせば開発できるとした。15年には、第1種地域でも条件付きで傾斜掘りを認めた。この規制緩和で、開発検討対象が資源量の7割に広がった。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度も、地熱発電を後押しする。

 30年度には地熱発電を現在の3倍にする目標を国が掲げたことから、全国50カ所以上で調査が進んでいる。万キロワット級の大規模発電所としては23年ぶりとなる山葵沢地熱発電所、八幡平発電所(岩手県八幡平市)の建設も始まったところだ。

 電源開発(Jパワー)の鬼首地熱発電所(出力1万5000キロワット)は、1975年運転開始の日本で4番目に古い地熱発電所。62年に調査を始めた後の68年に一帯が栗駒国定公園に指定された。そのため、環境保護に心を砕き、「源泉の温度や流量、成分などを継続して調べ、毎年の説明会で地域の方々に安心していただいています」という。今年度、古い設備を止め、環境アセス手続き後に設備更新して効率アップを図る。

 94年に運転を始めた東北電力の上の岱地熱発電所(出力2万8800キロワット)は、東北自然エネルギーが蒸気を生産し、その蒸気を東北電が買って発電している。20年以上も平均8割を超す設備利用率で発電する「優等生」。山小屋風の施設が印象的だ。

 Jパワー、三菱マテリアル、三菱ガス化学の出資による湯沢地熱が建設中の山葵沢地熱発電所は、出力4万2000キロワット。93年に事前調査に着手して23年がたっており、湯沢市は上の岱以来の「地熱」熱に沸いている。

 「地熱で未来を切り拓く」とうたう湯沢市は、市を挙げて地熱発電を応援する。発電以外にも乳製品や乾燥野菜の製造、水耕栽培、温水プールなどに地熱を利用するほか、地熱ツアーや出前授業など、「地熱のまち」の宣伝にも力を入れている。

 懸念されているような温泉への悪影響は、これまでどこにもない。むしろ地元は工夫を凝らして温水を産業や観光の振興に役立てている。自然環境や地域と共存しながら、さまざまな価値を利用する地熱発電開発の余地が日本にはまだまだありそうだ。

【プロフィル】東嶋和子

 とうじま・わこ 科学ジャーナリスト。筑波大・青山学院大非常勤講師。筑波大卒。米国カンザス大留学。読売新聞記者を経て独立。著書に「人体再生に挑む」(講談社)、「水も過ぎれば毒になる 新・養生訓」(文藝春秋)など。