元本3倍の敏腕投資家も 東商取コンテスト 192人が参加

提供:ブルームバーグ
東京商品取引所のトレーディングフロア(ブルームバーグ)

 商品先物を取り扱う東京商品取引所が今夏開催した「TOCOMリアルトレードコンテスト」。個人投資家が実際に資金を投じた取引で順位を競ったこのコンテストで、約2カ月半の期間に成績トップを収めた敏腕トレーダーは元本を3倍弱にまで増やした。

 ◆国内初の取り組み

 実際の取引で順位を競うという取引所主催のコンテストは国内初の取り組みで、最低投資金額は100万円。6月19日から8月31日までの期間で利益率を競った。コンテスト参加企業である商品先物取引会社15社に口座を持つ個人投資家192人が参加した。利益を確保した比率は44%、損失を出したのは56%だった。

 東商取の浜田隆道社長は「商品先物取引で利益を得ている個人投資家がいることを広く知ってもらいたいとの思いで始めた」と開催の狙いを語る。だが、高い利益率を示した参加者の実績には驚いた様子。「2カ月半で3倍になる金融商品は他にはほとんどない。コモディティー投資の面白さを示すことができた」と説明する。市場活性化につなげるため来年以降、年2回のコンテスト開催を計画している。

 元本を2.3倍として2位となったのはニックネーム「花火」さんこと奈良県在住の会社員、田之上拓己さん(43)。商品先物の投資歴は15年と長く、主に金と原油の「買い」の取引で利益を上げた。

 田之上さんが重視するのは米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週1回発表するヘッジファンドなどの投機家の取引データ。6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の利上げを受け、金利の付かない金についてはファンドによる買越幅が急減していることに注目。過去の利上げ後の動きを分析すると、ファンドのポジションが一度解消された後、再び積み上がる傾向が続いていることもあり、価格下落リスクは少ないと判断して「買い」のポジションを取った。その後、金価格は上昇し、利益につながった。

 一方、原油相場に対しては米国のシェールオイル増産で世界的に需給は弱いとの見方から「売り」の相場観を抱いていた。

 ところが、7月下旬から8月初めにかけて発表された米シェールオイル企業の決算を見ると、利益は出ておらず、赤字企業も多いことに気付く。原油価格が1バレル当たり40ドル台では利益は出ないのではないか。原油の在庫統計も減少傾向を示していた。石油輸出国機構(OPEC)などによる減産効果で需給は逼迫(ひっぱく)気味になっているのではと感じ、「買い」へと戦略を変えた。

 ◆売買繰り返す

 実際の取引では利益が出たら一部利益を確定させるなど売買を繰り返し、全体の利益を膨らませた。田之上さんはインタビューで「ガソリン価格が1円上がるだけでも人々は敏感に反応する。身近な生活につながっているところが商品取引の面白いところ」と語る。

 東商取が毎日公表する投資家別の取組高のデータも重視。「誰でも入手できるデータを参考にしている」といい、「誰が買って、誰が売っているのか。そこからもう一歩踏み込んで、この取り組み状況で相場がどうなっているのか現状を正しく認識することで結果が見えてくる」と秘訣(ひけつ)を明かす。

 浜田社長は「ハイリスク・ハイリターンなのでリスクには十分注意していただきたいが、マイナス金利の状況下で一定の余裕ある資金を投入すれば、これだけのパフォーマンスを得られるという事実は大きい」と話している。

 個人投資家の勧誘規制の強化などもあり、東商取の2016年の年間出来高はピーク時の03年と比べて約7割減少した水準にとどまる。(ブルームバーグ Ichiro Suzuki)