不発「スト3」を反面教師に… 格闘ゲーム人気の再爆発へ、「スト5」刷新の狙い

ビジネスのつぼ
カプコンの小野義徳執行役員

 ■eスポーツ意識 「誰でも分かるすごさ」重視

 「昇竜拳!」「波動拳!」-。1990年代前半、学校帰りの中高生は、ゲームセンターという“戦場”に見知らぬ相手と「ストリートファイター2(スト2)」で戦うために殺到した。ゲーム業界に一大ブームを巻き起こした「格闘ゲーム」の元祖のスト2は、現在の「eスポーツ」の源流とも言えるゲームだ。スト2はその後もシリーズを重ね、現在の5作目、ストリートファイター5(スト5)では、家庭用ゲーム機とパソコンを“戦場”として、日々、世界中のファイター同士がインターネットを介して戦い続けている。

 新規プレーヤー取り込み

 スト5は前作のスト4から8年ぶりとなる昨年2月に全世界で提供を開始した。8方向に操作できるキー(レバー)と6つのボタンの組み合わせでプレーするというのはシリーズ通して共通。弱中強の3段階でパンチやキックの「通常技」を繰り出すことができるほか、キーやボタンの組み合わせで、上方向にパンチを放ちながら飛び上がる「昇竜拳」などの「必殺技」を出すことができるのも共通した特徴だ。さまざまな通常技や必殺技を繰り出し、相手の体力をゼロにした時点で勝敗が決まるというのが、ゲームの一連の流れだ。

 カプコンの綾野智章プロデューサーは「スト5は、前作のイメージを継承すべきか、一から作り直すか、かなり悩んだ」という。

 というのも、前作はバージョンアップを繰り返して、世界中で多くのファンの獲得に成功したからだ。しかし、新規参入のプレーヤーを取り込むために一から見直すことが必要と判断。前作の特徴だった、通常技や必殺技を連続して相手にたたき込む「コンボ」を減らし、キャラクターごとの個性を際立たせること、必殺技の入力も簡単にすることなどの調整を実施したという。また、上級者にしか分からない隠れたシステムを減らすことによっても、新規参入を増やそうとした。

 さらに重視されたのが、eスポーツを意識したゲーム性にすることだった。

 前作の時点で、世界中で大会が開かれ、ゲームの周辺機器メーカーなどがスポンサーになったプロゲーマーも現れるなど、上級者が競い合って観戦者も盛り上がるというeスポーツの舞台となってはいた。

 ただ、それでも前作では、ゲームをやりこんだ人にしか、「うまさ」や「すごさ」が伝わらないところがあったという。カプコンの小野義徳執行役員は「ゲームを見ているカップルの女の子でもすごさが分かるような、『カープ女子』みたいなファンを作り出すことを目指した」と話す。20年前にリリースされたスト3が、見た目には面白さや奥の深さが分かりづらく、シリーズの中ではヒットしなかったことが反面教師になったようだ。

 スト5は、1年でキャラクターを6人ずつ増やすなど、今後もバージョンアップを続ける方針だが、eスポーツとしてずっとプレーされ続けるためには、プレーヤー側の魅せるプレーも必要といえそうだ。小野氏は「相手に勝つことだけを意識して地味なプレーをしていたプロゲーマーも、ゲームに詳しくない観戦者でも分かりやすいように、派手な技で勝つことを意識してくれるようになった」と語る。

 格闘ゲーム人気再燃へ

 スト5の“戦場”は、リリース当初はカプコン側の意図した通り、スト4の時代に活躍していた強豪プレーヤーが鳴りを潜め、スト5から始めた10代のプレーヤーが台頭し、世界中の大会で活躍した。ただ、現在はシリーズを通して戦ってきたベテランも、若いプレーヤーの反応速度に老獪(ろうかい)な読み合いの強さで対抗するなど、歴史のある格闘ゲームらしく群雄割拠の状態が続いている。

 カプコンは、スト5の世界中の強豪ゲーマーが1年を通してポイントを競い合うプロツアーを開催。世界中の観戦者が、レベルの高い対戦の様子を動画サイトなどで視聴して楽しんでいる。スト2時代からシリーズの制作に携わってきた小野氏は「スト5のプロツアーなどで、eスポーツのプラットフォーム(基盤)が確立すれば、ほかの格闘ゲームもプラットフォームに乗せたい」と語る。シリーズの最新作が待たれている人気格闘ゲームも構想にあるようだ。

 90年代前半の格闘ゲームの黄金時代をゲームセンターで過ごしてきた一人として、スト5の盛り上がりが今後の格闘ゲーム人気の再爆発につながることを期待したい。(大坪玲央)

 ≪企業NOW≫

 ■各企業とコラボ 30周年盛り上げ

 カプコンは8月30日のストリートファイターシリーズ30周年に合わせて、各企業とコラボしたさまざまなキャンペーンを実施。シリーズ最新作のストリートファイター5のほか、スト2シリーズの最新作のニンテンドースイッチ用ソフト「ウルトラストリートファイター2」の販売促進につなげる考えだ。

 ストリートファイター5のゲーム内では、8月30日にゲームの4キャラクターの30周年記念衣装を配信したほか、キャラクターの使用権や衣装の購入などに使えるゲーム内通貨をプレゼントした。

 ウルトラストリートファイター2については、女性歌手のMay’n(メイン)さんが同ゲームの主題歌として「恋しさとせつなさと心強さと」をカバーした。「恋しさと~」は23年前に篠原涼子さんがスト2シリーズの映画の挿入歌として大ヒットした曲で、当時のファンからも「懐かしい」という声が出るなど、好評を得ているという。

 そのほかにも、コンビニエンスストアの「デイリーヤマザキ」で、スト2のキャラクターが印刷されたクリアファイルが当たるキャンペーンや、スト2の人気キャラクターで特徴的な髪形の「ガイル」を、柳屋本店が整髪用ジェルのイメージキャラクターに起用。ストリートファイターシリーズのキャラクターやゲームの露出を増やすことで、シリーズ30周年の機運を盛り上げることに力を入れている。

 ■カプコン

 【設立】1979年

 【本社】大阪市中央区

 【資本金】332億3900万円

 【売上高】871億7000万円

 【従業員数】2811人

 【事業内容】家庭用テレビゲームの企画、開発、製造、販売、配信やアミューズメント施設の運営

 ※いずれも2017年3月末時点

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