「いきなり!ステーキ」強気の店舗倍増、一気に全国展開 社長「来年200店増」

 
牛肉の塊を客の目の前で切り分け、焼くのが「いきなり!ステーキ」のスタイルだ

 ペッパーフードサービス(PFS)が展開するステーキ店チェーン「いきなり!ステーキ」の勢いが止まらない。1号店を銀座4丁目にオープンした2013年12月以来、牛肉の塊を客の目の前で切り分ける注文方法や、グラム単位の手頃な価格設定が受け、客足を伸ばし続けている。店舗数は今年9月に150まで達したが、創業者の一瀬邦夫社長は「来年は1年間で200店増やす計画だ」と宣言する。

 週末の夕方、JR中央線の高円寺駅南口から徒歩2分ほどにある高円寺店(東京都杉並区)。フロアの25席は半分ほど埋まり、女性同士で連れ立って来店した客の姿も目立った。

 肉を注文する場所は席ではなく、厨房(ちゅうぼう)に設けられた“窓口”のような「カット場」だ。自分の分が目の前で大きなブロックから切り分けられる豪快な光景に、思わずつばを飲む。

 いきなり!ステーキの最大の特徴は、1グラム=7.3円からという値頃感のある「量り売り」で注文できる仕組みだ。熱々の鉄皿で客自身が好みの焼き加減に仕上げる。卓上には特製ソースに塩、しょうゆ、わさびなど多くの調味料が用意され、一口ごとに違った肉の味わいを楽しめるのもうれしい。

 常連客を囲い込み

 こうしたサービスと商品力が人気を集め、いきなり!ステーキは4周年を前に伸び続けている。今年度の月ごとの既存店売上高をみると、直近の9月まで前年同月比で20~40%台のプラスという快走だ。

 開業当初は客の回転率を上げるための立ち食いスタイルが注目されたが、最近ではショッピングセンターのフードコートへの出店が増え、着席可能な店も多い。その結果、家族連れなどの外食需要もつかんでいる。「2月のニューヨーク出店が大きく報じられ、チェーン自体の認知度が高まった効果も大きい」と、一瀬社長は笑いが止まらない。

 つかんだ客を離さない仕掛けが「航空会社のマイレージサービスをヒントにした」(一瀬社長)という、独自のポイントシステム「肉マイレージカード」だ。常連客の“囲い込み”を狙い1号店開業の半年後に導入した。食べたステーキの量を「肉マイル」に換算し、累計3000グラムに達すればスタンダードからゴールド、2万グラムでプラチナへと昇格。ランクに応じてクーポンなどのサービスが受けられる。

 さらに15年にはカードと連動したスマートフォン用アプリも導入し、会員同士で肉マイルを競い合うというゲーム性も取り入れた。ゴールド会員は15万人、プラチナ会員は1万人を超えた。100キログラム以上食べたダイヤモンド会員も177人を数え、一瀬社長もその一人だ。

 PFSの17年1~6月期の売上高は、前年同期比47%増の154億円で、営業利益は2.7倍の12億円と増収増益だった。8月には東証2部から1部上場への昇格も果たした。約430店を展開する「ペッパーランチ」も好調だが、成長を牽引(けんいん)しているのはいきなり!ステーキだ。店舗展開は今のところ直営店が約60%、社員が独立したり、運営受託したりした店が約15%を占める。しかし、外食のフランチャイズ店を展開する企業から「『いきなり』に乗り替えたい」という問い合わせが殺到しているという。

 一気に全国展開へ

 現在の店舗立地は首都圏が中心だが、フランチャイズ展開の加速により、来年以降は地方のロードサイド店が一気に増える見通しだ。糖質の摂取を制限(ローカーボ)する健康法の定着や、高齢者のタンパク質不足によるロコモティブシンドローム(運動器障害)への理解の深まりも追い風となっている。「ペッパーランチも含めて、国内1000店は射程に入った」(一瀬社長)というPFSの勢いは止まりそうにない。

 「まだ『いきなり』業態がなかった5年前は、コラボを申し込んでもつれないあしらいだったが…」。古参幹部の一人は、感慨深げにふり返る。今でこそ絶好調のPFSだが、07年にペッパーランチの大阪市内の委託店で起きた不祥事や、09年の食中毒発生で客足が遠のき、倒産の危機にまで陥った。

 だが今や、いきなり!ステーキは「コラボしたいチェーンのナンバーワン」(食品メーカー関係者)とまでいわれる。

 大手コンビニエンスストアのミニストップは昨年12月、「いきなり」監修のステーキ弁当など5商品を期間限定で発売。冷凍食品の「ビーフガーリックピラフ」を今年3月発売した日本水産は、スーパーなどの引き合いが殺到して生産態勢の増強を迫られた。

 この秋以降はスナック菓子とのコラボも相次ぐ。いきなり!ステーキとのコラボ商品を今月上旬から順次発売することになったジャパンフリトレーの岩崎直哉社長は「いきなり!ステーキの店舗拡大と歩調を合わせ、スナックのヒットにもつなげたい」と期待を込める。(山沢義徳)

 ■ペッパーフードサービスの主な出来事

 1985年10月 有限会社くに(現ペッパーフードサービス)を設立

 1994年 7月 神奈川県鎌倉市にペッパーランチのフランチャイズチェーン店舗第1号店を開店

 2001年 4月 日本フランチャイズチェーン協会正会員に加盟

 2006年 9月 東京証券取引所マザーズに株式上場

 2012年 2月 ペッパーランチ海外100店舗達成

 2013年12月 銀座に「いきなり!ステーキ」を開店

 2015年 3月 07年12月期以来、8期ぶりの復配

 2016年 8月 いきなりステーキ100号店達成

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