楽天、プロスポーツで目指す世界ブランド

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昨季覇者のウォリアーズとロケッツによるNBA開幕戦。楽天はNBAとの関係強化を図る=17日、米カリフォルニア州オークランド(AP)

 □二松学舎大大学院非常勤講師・宮田正樹

 米プロバスケットボールNBAの2017~18年シーズンの開幕戦が17日(日本時間18日)、火蓋を切った。その1週間前の10日(日本時間)、IT大手の楽天が今シーズンからNBAの試合の包括的かつ独占的なライブ放映・配信に関するパートナーシップ契約を締結したとの発表があった。期間は5年で、総額2億2500万ドル(約255億円)という。契約内容は、放送・配信事業にとどまらず、ネット通販サイト「楽天市場」でNBAのユニホームなど公式グッズを販売するマーケティング・パートナーとしての地位を確保するものでもあるようだ。

 狙いは試合動画配信

 楽天は昨年11月にサッカーのスペイン1部リーグの強豪、バルセロナと17~18年から4シーズンにわたり年間5500万ユーロ(約73億円)のスポンサー契約を結んだ。今年9月にはNBAの昨季王者のゴールデンステート・ウォリアーズと期間3年で総額6000万ドルに上るユニホーム・スポンサーシップを含む広範なパートナーシップ契約を締結した。プロスポーツを通じて世界でのブランドの浸透・確立と販路の拡充に注力している。

 NBAとのパートナーシップ契約の最大の狙いは、試合のライブ放映・配信にあり、動画配信サービス「楽天TV」の加入者を増やすための“キラーコンテンツ”と位置づけている。楽天TVは、今シーズンから「Rakuten NBA Special」という月額視聴サービスで、日本語の解説付きで毎週9試合配信する。

 NBAが日本で本格的にマーケティングを開始したのは1988年。伊藤忠商事と、開幕戦の興行を含むNBA全てのビジネスに関する包括的パートナーシップ契約を締結したことに始まる。伊藤忠とのパートナーシップは10年間に及んだ。私も当時、法務面で関わったが、このパートナーシップの開始から約30年がたち、プロスポーツの放送・配信ビジネスの巨大化とライブ映像の送信技術の進歩には驚きを禁じ得ない。

 1990年代は、地上波テレビの全盛期であり、BSの幕開け時代でもあった。NBAの試合も、マスター・ビデオを飛行機で取り寄せて放送するのが基本で、生放送する場合のみ衛星中継で電波を受けて放送していた。関係者にとっては胃が痛むような緊張感を持ってテレビ放送にこぎ着けていたのだ。

 地上波のテレビ放送に加えBS、ケーブルテレビ(CATV)、さらにはインターネット配信が視聴者を取り合う時代に入り、プロスポーツの「即時性」が視聴者獲得のためのキラーコンテンツとして注目されていることは、先に「OTTとテレビ 視聴者獲得争い本格化」(3月8日付)として紹介したばかりだ。

 テレビ放送が不可欠

 OTT(オーバーザトップ)とは通信事業者以外のコンテンツサービス企業のことだが、このところ攻勢を強めている。だが、技術革新が進んでいるとはいえ、WOWOWやNHK-BSなどテレビ放送に比べてネット配信は不安定で試合の途中で映像が止まったり、遅延したりすることがある。

 映像が安定していてもビットレートが低くデータ処理が遅いためテレビ放送のようななめらかなプレー映像にはいまだいたっていない。

 ファンの獲得・拡大を狙うには、やはりテレビ放送が欠かせない。NBAの試合の日本での放送・配信の独占権を得た楽天が、そのテレビ・メディアパートナーとしてどこを選ぶかが注目されるところである。

 開幕戦も無事に放送されたので、しばらくの間はWOWOWが従来通りテレビ放送するようだ。しかし、開幕戦前日の17日(日本時間)、楽天が「WOWOWにテレビ放映権をサブライセンスする」と発表したが、同日夜になって取り下げるという失態を演じている。理由は「テレビ放映権のサブライセンス先などに関し、正式契約にいたっていない」とのことで、(この原稿執筆時点では)詳細は不明である。

 大切なテレビ放映権に関して、ファンの存在を無視した泥仕合を演じるとキラーコンテンツの意味が、自らに対する刺客の意味に変わることになりかねないよ、と楽天には言っておきたい。

【プロフィル】宮田正樹

 みやた・まさき 大阪大学法学部卒。1971年伊藤忠商事入社。物資部、法務部を経て2000年5月、日本製鋼所。法務専門部長を経て、12年10月から社団法人GBL研究所理事・事務局長(現在に至る)。非常勤講師として04年から二松学舎大学大学院で「企業法務」、帝京大学で「スポーツ法」(08年~16年2月)に関する教鞭(きょうべん)をとっている。

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