害虫駆除剤 改善提案で改革

知恵の経営

 □アタックスグループ主席コンサルタント・西浦道明

 独自の「池(市場)」を見つけ出し、その池の「クジラ(圧倒的なシェア・ナンバーワン)」となった結果、高収益を獲得・維持している企業を紹介している。今回はゴキブリ殺虫剤などの製造販売を行う、タニサケ(岐阜県池田町)の池クジラぶりを見ていきたい。

 同社は1985年、現会長の松岡浩氏が、発明家の谷酒茂雄氏と「谷酒生物公害研究所」を設立したのが始まり。翌86年には「ゴキブリに困っている世界中の人たちを助けたい」という思いから、タマネギの成分でゴキブリを引き寄せて駆除する、それまでにはなかったゴキブリ殺虫剤「ゴキブリキャップ」を開発した。

 ゴキブリの好きなにおいを含むタマネギやピーナツを誘引剤とし、ホウ酸を殺虫成分としたホウ酸だんご。ゴキブリが食べるとホウ酸の働きで脱水状態になり、水を求めて屋外へ出て死んでしまう仕組みだ。

 ホウ酸だんごは誘引剤にホウ酸を混ぜるだけ。しかも、製法特許を公開したため一般家庭でも作られるようになった。類似商品がある上に、大手メーカーから安価なゴキブリ駆除剤がたくさん発売されているにもかかわらず、なぜゴキブリキャップは支持されるのだろうか。

 ゴキブリキャップの大きな特徴は、化学合成の農薬を含む殺虫剤と違い、ホウ酸にゴキブリが耐性を持てないため、毎年設置しても同じ効果が出ること。1個が五百円玉サイズで、重さも約10グラムあり誘引効果が長持ちする上、乾燥していて長く置いてもカビや雑菌などの発生が抑えられる。

 こうした特徴を生み出しているのは、タニサケが「日本一の知恵工場」と自負する改善提案活動のおかげだ。改善提案数は年間2400件以上と、1人当たりの報償金額では「カイゼン活動」で知られるトヨタ自動車の数倍というから驚きだ。しかも、提案をしているのが35人の社員のうち管理職を除いた20人というから、さらに驚かされる。

 改善提案を始めたのは91年。きっかけは社員に当事者意識を持ってもらうための取り組みだった。当初の数年は会社への苦情ばかりが集まった。それでもどんな小さな提案も受け入れ、不採用の場合は理由をきちんと伝えた結果、内容が向上していった。社員も提案が受け入れられれば会社側がすぐ実施してくれるため、それがうれしくてやる気を高め、次々に提案をするようになったという。

 同社は、ゴキブリをはじめとする害虫被害に悩んでいる多くの家庭に、世の中になかったゴキブリキャップという、置き型タイプの殺虫剤を開発した。さらに社員を巻き込んだ提案活動により置き型タイプの害虫駆除市場(池)を改革し続け、その圧倒的なクジラとなっている。

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【会社概要】アタックスグループ

 顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

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