逃げない、隠さない、ウソつかない

Bizクリニック

 □広報ブレーン 代表取締役・管野吉信

 株式上場会社が中期経営計画を発表したら、メディアから社長への取材依頼があった。中小企業がニュースリリースをメディアに送付したら、電話で問い合わせがあった。あるいは事件、事故の発生によって、メディアが多数押しかけてきた-。それぞれ状況が異なるものの広報活動でメディアにどう対応すべきかの格言がある。それは「逃げない、隠さない、ウソつかない」ことと、クイックレスポンス(素早い回答)だ。

 広報は、一般社会と良好な関係を構築・維持し、自らのブランド力を高めるための活動だから、メディアから逃げてはいけない。筆者が、ある中小企業を訪問した際に、一般紙の社会部記者がアポイントメントなしで訪れ、社長取材を申し入れてきたことがある。社長は居留守を使い、取材に応じなかった。逃げたわけだ。結果は約1カ月後、同紙の社会面トップ記事となった。記者は周辺取材と状況証拠によって「クロ」と判断した。逃げずに説明責任を果たせば、少しは記事のトーンが変わっていたように思う。

 「隠さない、ウソつかない」はセットで説明しよう。「隠さない」ことは基本だが、まだ決定していない構想中のものを決定したかのように話すのは問題がある。メディアが記事にした後、構想が変わると「誤報」になってしまうからだ。隠さないことがウソをつくことになってしまう。これを広報活動では「ミスリードする」という。

 筆者が広報室長を務めていた企業では、社長が管理部長を通じて短期間に5000万円もの資金を仮払いさせ、解任させられた。上場企業だったのでトップ交代は適時開示しなければならない。困ったのは解任理由だ。経営陣は解任した社長に仮払金の返済を求めているため、この段階で「着服」の認定はなされておらず、特別背任を理由にするとミスリードする可能性がある。結果的に国産の高級中古車を役員会の決議なしに購入したことを理由にし、ウソをつかず、ミスリードもしない対応を選択した。「隠さない、ウソつかない」はミスリードをしないことを前提に、誠実な対応を心掛けることと理解してもらうといいだろう。

 また、クイックレスポンスは締め切りを抱えるメディアへの配慮だ。ニュースリリースをメディアに送付しているのに、問い合わせがあると「いま、社長が不在なのでお答えできない」などと答えを保留する企業は非常に多い。あるいは数字を聞かれて「調べます」と答え、担当者不在で回答が遅くなるケースも少なくない。筆者は企業トップや広報担当者に対して「メディアをお客さまと思って接する」ように伝えている。顧客を待たせて平気でいたら、顧客を失う。掲載される記事も、掲載されなくなる。

【プロフィル】管野吉信

 かんの・よしのぶ 駒大法卒。1981年日刊工業新聞社入社。中小企業部長、金融市況部長、第1産業部長、経産省の中小企業政策審議会臨時委員。2007年ジャパン・デジタル・コンテンツ信託に入社し広報室長。執行役員として粉飾決算などの不祥事の後処理を担当。12年7月広報ブレーンを設立し、現職。58歳。福島県出身。

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