日本初のラグビーW杯、観客増加に知恵を

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ラグビーのワールドカップ優勝杯を囲み、記念撮影する(左から)福岡堅樹選手、堀江翔太選手、大野均選手ら=9月20日、東京都渋谷区

 日本で初めて開催される「ラグビーワールドカップ(W杯)2019」の試合日程が2日に発表され、全48試合の会場が入場券販売の概要とともに初めて公にされる。既に2年後の9月20日の開幕戦は、東京都調布市の味の素スタジアム、11月2日の決勝戦は横浜市の日産スタジアムでの開催が決まっている。

 ◆試合の場所に注目

 「『ティア1』と呼ばれるラグビーの伝統国、チームがどこで試合をするのか、大会成功の成否を分けるといってもいい」

 世界のラグビー事情に詳しい大妻女子大の井上俊也教授は、経済的な側面から日程発表を注目する。「人気と実力を兼ね備えたニュージーランドやオーストラリア、イングランド、アイルランドなどは大きなファン層に支えられている。彼らは自分たちが応援するチームの試合に応じて“転戦”していく。どこで試合をするかで入場者動向も変わり、情報発信も含めた波及効果も異なる。日本が想定する開催収入、開催効果に大きな影響を与えるでしょう」

 以前、小欄でも紹介したが、ラグビーW杯の開催収入の大半は入場料に頼らざるを得ない。

 国際統括団体のワールドラグビー(WR)は、ワールドワイド・スポンサーからの協賛金やテレビの放送権料を大会組織委員会には還元しない。国際オリンピック委員会や国際サッカー連盟は大会ごとに協賛金や放送権料から相当額を組織委員会に補填(ほてん)、大会運営費に充てるが、ラグビー界には伝統的にそうした仕組みはない。

 それどころか、開催国に9600万ポンド(約145億円)の供出金の上納すら義務付けてさえいる。つまり、開催国が興行権を「買うことが当たり前」の世界である。

 いきおい、頼りは入場者収入となり、国内外の観客動員に知恵を絞らなければならない。過去8回の大会は全て、この方式で行われ、さすがにラグビー先進国はそつなくこなしてきた。前回15年のイングランド大会は平均100ポンドの入場料を設定、高額ながらも、過去最多だった07年フランス大会の225万枚を抜く241万枚の入場券を販売した。入場料収入は2億ポンドを記録している。

 しかし、19年は初めてティア1以外の国で開く大会である。ラグビー強国でもなく、ラグビー文化も定着していない日本で同じように事が運ぶだろうか。

 当初、組織委員会が設定した入場料収入は300億円。48試合、1試合平均3万人が入場するとして、1枚当たり2万円以上の入場料を設定する必要がある。現実味に乏しい。200億円から260億円との見通しもあるが、厳しい数字である。

 組織委員会は、ティア1チームは4万人以上収容の会場での開催が義務付けられるなど、WRからの制約もある中で検討を重ねた。日程発表を、いま一つ盛り上がりを欠く国内人気を高める起爆剤としたい。

 同時に、海外からの観戦客増大に着手する必要もある。井上教授は「大会期間中、家族など同伴者を含めて長期滞在する海外のラグビー愛好家を呼び込むことが重要だ」と指摘した。

 今年4月、日本政府観光局ロンドン事務所が英国のラグビーに関心の高い層を対象に行ったアンケートでは、19年ラグビーW杯観戦を目的とした訪日旅行を考えている人が60.8%に及んだ。その場合、1人で行くが4.6%だったのに対し、配偶者・パートナーを伴うのは45.1%、家族44.7%、友人39.1%と圧倒的に同伴者連れが多かった(複数回答)。

 ◆認知度上昇策が急務

 また、日本開催を知っている人は61.4%。開催都市への認知では東京こそ55.8%あったものの、大阪28.2%、横浜22.8%で、大分に至っては2.6%しか知られていない。いずれも知らない層が33.6%と高く、試合会場と対象国を結び付けた認知度上昇策を急ぐべきだろう。

 目下、期間中の訪日客は約40万人を見込む。ラグビーW杯公式旅行代理店のJTBをはじめ、交通機関など各関連会社は、新たな客層の掘り起こしを模索する。

 民間シンクタンクのEY総合研究所が約4200億円、日本政策投資銀行は2330億円と試算する経済波及効果でも訪日客の占める割合は高い。

 訪日観光客増加を目指す政府の動きと連動し、開催自治体、民間も巻き込んだ知恵がラグビー界に求められている。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)

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