中国で高まる人材開発ニーズ 企業が急成長、統率能力追い付かず

高論卓説

 日本の企業・団体に加えて、中国でも人材開発プログラムを実施している。中国版シリコンバレーといわれる北京の中関村の加盟企業が中心で、業種はIT、コンサルティング、金融・保険など多岐にわたり、職位も経営者から若手社員までさまざまだ。中国人経営者に人材開発ニーズについて聞くと、企業が急成長を遂げる中、大量採用・大量脱落の負の連鎖を断ち切るために、リーダーシップスキルを高めたいというものが多い。

 企業成長に応じて大量採用を繰り返す中、採用した社員の育成やケアが追い付かない。パフォーマンスを上げるサポートができない。不満があっても解消するためのアクションがとれない。

 こうした状況を解決できないうちに、問題や不満を抱えた社員は競合他社に転職することが常態化しているという。企業成長にリーダーシップスキルが追い付いていないことを自覚しているのだ。

 そして、時間をかけないで、すぐにスキルを身に付けたいという要望に接する。圧倒的なスピード感で新しいものを取り入れようとする中国人経営者ならではの反応だ。愚直な行動の反復により優れた技を体得する「日本の職人精神を、しかし時間をかけずに学びたい」と言った経営者もいる。

 中国で実施しているのが、分解スキル反復演習型能力開発プログラムだ。リーダーシップスキルやビジネススキルのうち身に付けたいスキルをパーツ分解し、それを反復演習によって体得するプログラムだ。

 課題解決、業績管理、合意形成、対立解消、時間管理、行動計画、表現手法、構成手法など、基本的なスキルを1プログラム2時間、演習方式で身に付ける。

 中国人経営者に特にニーズがあるのは、業績管理プログラムに含まれる部下を巻き込むスキルだ。中国人は日本人よりも、トップダウン型のマネジメントをしやすい。話法の観点から分解していくと、命令と指示の話法がほとんどだ。そこで、上司が部下に命令や指示を一切せずに質問だけで面談する方法を演習する。

 部下の状況、成果が出た取り組み、成果が出なかった取り組み、さらに改善したい点、上司にサポートを得たい点を質問し、サポートすることを同意した上で、上司から助言をする。おのおのの質問を15分ずつ反復演習する。

 また、トップダウン型のマネジメントを表現の観点から分解していくと、上司が部下に対して覆いかぶさるように見つめている。

 さらに分解していくと、相手の目を見つめる時間が長く、アイコンタクトを外す際に斜め上に外してから降ろしているので、上からにらむ動作をしている人が多いことが分かった。

 そこで、相手を見つめる秒数を2、3秒にとどめてアイコンタクトを外す反復演習を繰り返す。それができるようになると、アイコンタクトを右上に外さないで、下に外す反復演習をする。アイコンタクトの秒数に15分、外し方に15分使って反復演習していくだけで、見違えるように相手を巻き込みやすくなる。

 中関村の幹部には国家公務員もいるのだが、そこには、日中間の複雑な国民感情の類はみじんも感じられない。「日本の職人精神」を学ぶ中国人経営者の「時間をかけずに学びたい」というスピード感を見習いたい。

【プロフィル】山口博

 やまぐち・ひろし モチベーションファクター代表取締役。慶大卒。サンパウロ大留学。第一生命保険、PwC、KPMGなどを経て、2017年8月にモチベーションファクターを設立。横浜国立大学非常勤講師。著書に「チームを動かすファシリテーションのドリル」(扶桑社)。55歳。長野県出身。

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