トヨタ、最高峰ドライバー育成加速 スポーツで若者にクルマの魅力アピール

 
排気量2リットルの旧型フォーミュラ車に乗り込み、練習走行に臨むフォーミュラトヨタ・レーシングスクールの参加者=8月、静岡県小山町の富士スピードウェイ

 トヨタ自動車がモータースポーツで活躍する日本人選手の育成活動を広げている。若手の育成プログラム「フォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS)」は20年以上続き、元F1ドライバーの小林可夢偉選手らを輩出。2015年からはラリー選手の育成も始め、最高峰の世界ラリー選手権(WRC)への起用を視野に入れる。スター選手を通じてクルマの楽しさや魅力を伝え、停滞する国内市場の活性化を目指す。

 ブアーン、バッ!バッ!。8月上旬、富士スピードウェイ(静岡県)ショートコースでは数台のレース車両が時速約120キロで快音を響かせながら短い直線を走り抜け、急減速してコーナーに飛び込んでいた。

 運転するのは今年のFTRSに参加した15~19歳の12人。表情にあどけなさは残るが、応募者42人からカートの戦績などで選ばれた精鋭だ。

 元F1選手、個別指導

 走行後は会議室で、小林選手や中嶋一貴選手ら国内外で活躍する卒業生が個別指導。参加者のアクセルの踏み具合などをデータで示し、「ブレーキは踏んだ後、離すときも丁寧に」「コーナーはコース幅を目いっぱい使って、内側の縁石を狙う」と具体的な指示が飛ぶ。

 三重県から参加した三宅淳詞選手(18)は4歳からカートを始め、この日も好タイムを記録した。「タイヤが滑った際の制御が難しい」と課題を挙げつつ、「どんなレースでもトップ争いができる選手になりたい」と話した。

 FTRSは1995年に若手選手の育成やモータースポーツの底辺拡大を目的に始まった。2泊3日の合宿形式で座学や模擬レースを行い、トヨタが全日本選手権参戦を支援する「スカラシップ生」を選抜する場でもある。

 仏ル・マン24時間レース優勝経験者である校長の関谷正徳氏は「日本のモータースポーツの質を高めたい」と力を込める。

 トヨタがレース車両の開発のみならず、選手育成に乗り出すのは国内市場への危機感があるためだ。日本はクルマの実用性が重視され、「限界で操るスポーツとしての魅力が理解されていない」(関谷氏)。結果、若者を中心としたクルマへの関心の低下につながり、16年度の国内市場は507万7904台と10年間で1割減少。トヨタは163万台でシェア首位を守るが、少子化などで先細りへの懸念は強い。

 魅力伝え関心喚起

 このためトヨタはFTRSに加え、ラリー選手の育成も始めた。今年のWRC復帰を前に、選抜した若手2人を本場のフィンランドに派遣。WRCは改造した市販車「ヤリス(日本名ヴィッツ)」で参戦する中、「日本人の若手が活躍すれば同世代が興味を持ち、クルマ好きが増える」(市川正明・ラリーグループ長)。

 実際、育成3年目を迎えた勝田貴元選手は今年6月、WRC第7戦イタリアの下位クラスで3位に入った。勝田選手は「結果を残し、日本でもモータースポーツを盛り上げる。ヤリスでWRC王者になりたい」と前を向いた。(会田聡)

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