ネット通販に押される名門百貨店 リストラと社内融和の“ジレンマ”…変化への対応でつまずく三越伊勢丹

検証エコノミー
三越伊勢丹ホールディングスの中期経営計画を説明する杉江俊彦社長=7日、東京都千代田区大手町

 百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングス(HD)が、業績低迷にあえいでいる。主力の衣料品でインターネット通販などが台頭する一方、競合他社に比べリストラや業態転換が遅れたからだ。大西洋前社長の突然の辞任を受け4月に杉江俊彦社長が就任。7日には中期経営計画を発表するなど構造改革を急ぐが、成果は見通せない。名門百貨店は復活できるか-。(大柳聡庸)

 10月末の午前7時。早朝にもかかわらず、幕張本郷駅(千葉市)のロータリーには100人程度の男女が行列していた。送迎バスが10分おきにやってきては次々に人が吸い込まれ、すぐにまた行列ができる。

 衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイの物流倉庫(千葉県習志野市)で働く従業員たちだ。梱(こん)包(ぽう)作業などに従事する20代の男性は「時間によってはバスがすし詰め状態になることもあり、早めに来ている」と話した。

 洋服をネット通販で買う若者が増え、ゾゾタウンの取り扱い量も急増。同社は物流倉庫を増やす計画だ。

 ネット通販などの成長のあおりを受けたのが、衣料品を主力に据えてきた百貨店。平成28年の全国の百貨店売上高は36年ぶりに6兆円を下回り、ピーク時の3年に比べ、売り上げ規模は6割に縮小した。

 好調な業績を受けてスタートトゥデイの時価総額は8月に1兆円を超え、前沢友作社長は「さらに上を目指す」と胸を張る。一方、売上高がスタートトゥデイの10倍以上もある三越伊勢丹の時価総額は半分以下の5千億円弱にすぎない。

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 「次に取り組みたいのが簡単にいうとゾゾタウンがやっているビジネスだ」

 7日、三越伊勢丹が東京都内で開いた決算の記者会見。杉江社長は急成長するスタートトゥデイへの対抗心をあらわにした。杉江社長が想定しているのは、自社の通販サイトを立ち上げ、同サイトに“出店”するアパレル会社から販売代金に応じて手数料を受け取るビジネス。

 構造改革を急ぐのは、「稼ぐ力」で同業のライバルに劣っているからだ。

 三越伊勢丹の29年度の本業のもうけを示す営業利益の見込みは180億円と、高島屋やJ・フロントリテイリングの半分以下。その理由について、野村証券の担当アナリストである青木英彦氏は「三越伊勢丹は不動産事業など百貨店以外の事業で出遅れた」と指摘する。

 高島屋は家具大手ニトリなど専門店を積極的に誘致。J・フロントも今年4月、東京・銀座に複合商業施設「GINZA SIX(ギンザシックス)」を開業するなど不動産事業を強化する。

 だが、三越伊勢丹は主力の衣料品を中心に、自前で仕入れた商品を自前で売り切る従来型の百貨店事業にこだわり、環境変化への対応でつまずいた。

 「まずは構造改革に取り組む」(杉江社長)考えだが、その後の成長戦略を描けなければ、ライバルに稼ぐ力でさらに水をあけられかねない。

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 千葉県松戸市の伊勢丹松戸店。10月中旬の夕方に訪れると、上層階の衣料品売り場は客がまばらだった。JR松戸駅から5分ほどの好立地ながら、ネット通販などに客を奪われて赤字が続き、来年3月21日に閉鎖されることが決まった。市内に住む60代女性は「なくなってしまうのは寂しい」と話す。

 閉鎖が発表されたのは9月末。だが、閉鎖の話が持ち上がったのは昨年11月までさかのぼる。当時社長だった大西氏が、決算会見で同店を含む4店舗を構造改革の対象と言及したからだ。

 この発言に労働組合などが猛反発。社内の混乱を招き、大西氏が社長を引責辞任する引き金となった。このため、杉江社長は「(リストラは)労組とひざ詰めで話し合う」という。

 しかし…。

 三越伊勢丹に「追い出し部屋」ができた-。

 今年4月、一部週刊誌にこんな記事が掲載されると社内に動揺が走った。

 同社は、繁忙期を中心に棚の整理や顧客誘導などを手掛ける「販売支援組織」であり、肩たたきを前提とした追い出し部屋とは異なるとの見解だ。ただ、配置された従業員は降格で給料が下がるケースも多く、杉江社長は「人選を含めてやり方が拙速だった」と反省の弁を述べた。

 人件費削減は喫緊の課題だが、拙速なリストラは、大西前社長時代のような不協和音を招きかねない。杉江社長は構造改革と社内融和の両立という“ジレンマ”に陥っている。

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 ■三越伊勢丹ホールディングス 延宝元(1673)年に創業した三越と、明治19年創業の伊勢丹が平成20年4月に経営統合し誕生した。三越は富裕層の顧客基盤に強みを持ち、伊勢丹は衣料や雑貨の目利きに定評がある。リストラなどをめぐる社内混乱の責任を取る形で、「ミスター百貨店」と呼ばれた大西洋氏が社長を辞任。今年4月に杉江俊彦社長が就任した。競合他社に比べ構造改革で出遅れ、29年3月期の連結営業利益は前期比27・7%減の239億円にとどまった。

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