かめはめ波を打ちたい、エヴァを動かしたい… バンナム担当者が明かすアニメVR成功の秘訣

 
「ドラゴンボール VR 秘伝かめはめ波」ではかめはめ波を放って地面をえぐる体験ができる

 世界中から集まるバイヤーを相手に、映画やテレビ番組、アニメーション、音楽といったコンテンツを取引する見本市、ジャパンコンテンツショーケース2017が10月末に東京都内で開催され、コンテンツに関するセミナーも開かれた。10月24日開催の「『コンテンツ×VR』の最前線」では、東京・歌舞伎町に7月オープンしたVR ZONE SHINJUKUを仕掛けたバンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)の開発担当者が出席。「ドラゴンボール」や「機動戦士ガンダム」といったIP(知的財産)を使ったVRを作る時に大切なことを明かした。

 「その体験は王道か?」。これが、バンダイナムコエンターテインメントでアニメーションのIPを使ったVRを提供する時に、開発担当者が重要視するポイントだという。VR ZONE SHINJUKUに導入され、いつもプレーを待つ人で行列ができているアクティビティ「ドラゴンボール VR 秘伝かめはめ波」の場合は、孫悟空のようにかめはめ波を打ちたいというドラゴンボールファンの夢を叶えることにこだわった。

 AM事業部エグゼクティブプロデューサーの小山順一朗氏、AMプロデュース1部プロデュース4課マネージャーの田宮幸春氏によれば、企画の段階では「桃白白(タオパイパイ)のように投げた柱に乗って飛ぶ」、あるいは登場人物たちが見せる「舞空術で空を飛ぶ」ことをVRで体験させる案が出たという。実現すれば確かにドラゴンボールの登場人物になった気分を味わえるが、小山氏らは「王道ではない」と判断して選ばなかった。

 新しいエンターテインメントを開発する場合、たいていは過去に例のないことをやりたがる。ドラゴンボールについて言えば、悟空になりきってかめはめ波を打つような玩具やゲームが、これまでに幾つも出ていて、やり尽くされている印象が先に立つ。これらの焼き直しになるのを避けたいと、桃白白の再現に向かいたくなるのも仕方がない。

 しかし、そこで「逃げちゃだめ」と小山氏は強調する。「かめはめ波が玩具やゲームでやり続けられているのは、それだけニーズがある証拠。ここを逃げてはいけない。迷わず王道へ行くべき」と田宮氏も指摘する。

 もちろん、前例をただ踏襲するだけではいけない。「新鮮な感動と驚きは“現実への超解釈”で生み出す」。例えば「ドラゴンボール VR 秘伝かめはめ波」では、VR空間でかめはめ波を打つと足下がえぐれ、岩が吹き飛んでいく。今までの玩具やゲームでは味わえなかった体験を、VRなら提供できるという訳だ。

 「エヴァンゲリオンVR The 魂の座」というVRでも、アニメに登場する巨大な人型兵器のエヴァンゲリオンを操縦して、使徒を相手に戦ってみたいというファンの王道とも言える要望を形にした。そこで開発陣は、操縦者がエヴァンゲリオンのどこに乗っているのか、頭の上かあごのあたりかを検討し、「あごの先に立っているような状態にすると恐ろしく感じる」と考え、その位置でVR化を行った。

 ここでもうひとつ、重要視されているのがアニメやマンガの主人公にそのままプレイヤーを重ねるようなVRにはしないこということ。巨大になりたい、怪力を手にしたい、格闘してみたいといった願望をかなえようとすると、かえって「あれ、おかしいなと思ってしまう。ヒーローのようにできない自分にガッカリしてしまう」と田宮氏は指摘する。だから、あくまでも自分自身がVR空間に入り、主人公に近づこうとするようなストーリーにするという。

 「エヴァンゲリオンVR The 魂の座」では、プレイヤーはアニメの主人公たちのように14歳のチルドレンとして高いシンクロ率を出すことはできない。低いシンクロ率でプレーに参加し、使徒を相手に戦って敗れる体験を余儀なくされる。そこから何度もプレーを重ねていき、仲間と協力して使徒を倒せるようになった時に、成長を感じて感動を得ることができる。

 「ドラゴンボール VR 秘伝かめはめ波」でも、やり始めはかめはめ波をうまく打てないが、VR空間に悟空やピッコロたちが現れ打ち方を教えてくれ、うまく打てれば褒めてくれる。こういった演出を入れることによって「悟空って本当にすごいなあ」といったヒーローたちへの敬意が生まれる。ゲームが高得点を叩き出すための作業ではなく、成長と達成を感じるための探求になっているとも言える。

 VRにとってIPがすべてではない。この日、バンダイナムコエンターテインメントといっしょに講演を行ったハシラス(千代田区)は、VRにIPは乗せず、乗馬や金塊集めといった現実ではなかなか得られない体験を、VR空間で与える装置を展開して驚きを誘っている。VR ZONE SHINJUKUにも、IPを使わず道具を工夫しアイデアを乗せることで驚きを誘うアクティビティが幾つもある。

 ただ、やはり「ドラえもん」や「ドラゴンボール」「機動戦士ガンダム」といった人気IPを活用したVRは、知名度があってファンを引きつやすい。バンダイナムコエンターテインメントに限らず、こうしたアニメIPのVRはこれからも開発・投入されてきそう。その際に、なにが成否を分けるかを考える上で、「王道の追究」という意見は参考となりそうだ。

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