三越伊勢丹、リストラと社内融和の“ジレンマ” 早期復活見通せず

 
来年3月の閉鎖が決まった伊勢丹松戸店=千葉県松戸市

 百貨店最大手の三越伊勢丹ホールディングスが、業績低迷にあえいでいる。インターネット通販などの台頭で主力の衣料品が不振に陥っただけでなく、競合他社に比べリストラや業態転換が遅れたためだ。大西洋前社長の突然の辞任を受け4月に就任した杉江俊彦社長は、7日に中期経営計画を発表するなど構造改革を急ぐが、社内の融和も進める必要がある。経営のかじ取りは難しく、名門百貨店の早期復活は見通せない。

 変化に対応できず

 10月末の午前7時。早朝にも関わらず、幕張本郷駅(千葉市)のロータリーには100人程度の男女が行列を作っていた。送迎バスが10分おきにやってきては次々に人が吸い込まれ、すぐにまた行列ができる。

 皆、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイの物流倉庫(千葉県習志野市)で働く従業員らだ。梱包(こんぽう)作業などに従事する20代男性は「仕事は忙しい。時間によってはバスがすし詰め状態になることもあり、早めに来ている」と話した。実際の店舗ではなく、洋服をネットで買う若者らが増え、ゾゾタウンの取り扱い量も急増。同社は物流倉庫を増やす計画だ。

 ネット通販などの成長のあおりを受けたのが、衣料品を主力に据えてきた百貨店。2016年の全国の百貨店売上高は36年ぶりに6兆円を下回り、ピーク時の1991年に比べ売り上げ規模は6割に縮小した。

 好調な業績を受けスタートトゥデイの時価総額は8月に1兆円を超え、前沢友作社長は「さらに上を目指す」と胸を張る。一方、スタートトゥデイより売り上げ規模が10倍以上あるにもかかわらず、三越伊勢丹の時価総額は半分以下の5000億円弱に過ぎない。

 「次に取り組みたいのが簡単に言うとゾゾタウンがやっているビジネスだ」

 7日に東京都内で開かれた決算会見で杉江社長はこう述べ、急成長するスタートトゥデイへの対抗心をあらわにした。杉江社長が想定するのは、自社の通販サイトを立ち上げ、出店するアパレル会社から販売代金に応じて手数料を受け取る事業だ。だが、現状は“稼ぐ力”でライバルに劣っていることは否めない。

 三越伊勢丹の2017年度の営業利益見込みは180億円と、高島屋やJ.フロントリテイリングの半分以下。営業利益で見劣りする理由について、野村証券の担当アナリストである青木英彦氏は「三越伊勢丹は不動産事業など百貨店以外の事業で出遅れた」と指摘する。

 高島屋は家具大手ニトリなど専門店を積極的に誘致。J.フロントも今年4月、東京・銀座に複合商業施設を開業するなど、不動産事業を強化する。

 三越伊勢丹は主力の衣料品を中心に自前で仕入れた商品を、自前で売り切る従来型の百貨店事業にこだわり、環境変化への対応でつまずいた。

 杉江社長は「まずは構造改革に取り組む」考えだが、その後の成長戦略を描けなければ、ライバルに稼ぐ力でさらに水をあけられかねない。

 店舗閉鎖に猛反発

 千葉県松戸市の伊勢丹松戸店。10月中旬の夕方に訪れると、上層階の衣料品売り場は客がまばらだった。JR松戸駅から5分ほどの好立地ながら、ネット通販などに客を奪われ赤字が続き、来年3月21日に閉鎖されることが決まった。市内に住む60代の女性は「なくなってしまうのは寂しい」と話す。

 閉鎖が発表されたのは今年9月末。だが、閉鎖の話が持ち上がったのは昨年11月まで遡(さかのぼ)る。当時社長だった大西氏が、決算会見で伊勢丹松戸店を含む4店舗を構造改革の対象として言及した。

 この発言に労働組合などが猛反発。社内の混乱を招き、大西前社長が引責辞任する引き金となった。このためリストラは「労組とひざ詰めで話し合う」(杉江社長)と、社内融和に軸足を置かざるを得ない。

 三越伊勢丹に「追い出し部屋」ができた-。今年4月、一部週刊誌にこんな趣旨の記事が掲載されると、三越伊勢丹社内に動揺が走った。

 追い出し部屋と指摘されたのは、繁忙期を中心に棚の整理や顧客誘導などを手掛ける販売支援組織だったが、社内には疑心暗鬼が広がった。この組織は直後に解散されたが、杉江社長は「人選を含めてやり方が拙速だった」と、この問題の火消しに追われた。

 三越伊勢丹は、統合後に管理ポストが増えたことなどで人件費が膨らんだ。人件費削減は喫緊の課題だが、リストラを急げば、大西前社長のように社内の不協和音を招きかねない。杉江社長は構造改革と社内融和の両立という“ジレンマ”に陥っている。(大柳聡庸)

 ■主な小売りの事業規模

 ≪三越伊勢丹HD≫

  ・時価総額   4870億円

  ・売上高  1兆2650億円

  ・最終利益    100億円

 ≪スタートトゥデイ≫

  ・時価総額  1兆175億円

  ・売上高    1000億円

  ・最終利益    222億円

 ≪ファーストリテイリング≫

  ・時価総額 4兆2090億円

  ・売上高  2兆 500億円

  ・最終利益   1200億円

 ※時価総額は8日時点。売上高と最終利益はファーストリテイリングが2018年8月期、他の2社は18年3月期の予想

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