【視点】産経新聞編集委員・宮田一雄 指先から違いを作る (1/3ページ)

2010.1.19 05:00

 ■エイズ対策で企業イメージ向上

 峡谷を吹き抜けるような冬のビル風にあおられると、ニューヨークに特派員として赴任した1993年の3月当時を思い出す。早春の風が冷たく頬(ほお)を刺す摩天楼の谷間で、やたらに目についたのが「NAIL」の色鮮やかな看板だった。

 「ひょっとしてこれは」

 マンハッタンで最も流行(はや)っているレストランチェーンの名前ではないか。真っ先に想像したのはそんなことだ。いったい何料理だろう…。

 いや、お恥ずかしい。爪に絵を描いてもらう店があんなにたくさんあるだなんて、おしゃれに疎いおじさん記者には考えもつかないことだった。

                   ◇

 20年近い時が経過し、さすがに私も「ネイルアート」の存在ぐらいは知るようになった。日本でも指先のおしゃれはもう当たり前。昨年暮れには、東京で知人の女性たちが思い思いの「赤いリボン」を爪に描いて町を歩く場面にも遭遇した。

 エイズ対策のシンボルマークであるレッドリボンは1980年代の終わりごろ、エイズで亡くなった人のために、その友人や家族であるニューヨークの芸術家たちが追悼の赤いリボンを胸に着けて町を歩いたのが始まりだった。有効な治療法がまだ開発されず、米国の大都市ではエイズの原因ウイルスであるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した多数の若者が発病し、死んでいった。

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