2010.2.2 05:00
児玉氏が所有する外洋ヨット「テティス」【拡大】
□ファイト!!日本
■一度決めた航路をただ進むのみ
私はベンチャー企業の経営に携わっている。といっても昨年還暦を迎えたロートルなのだが、ベンチャー経営者としてはいまだ駆け出しである。さる大手家電メーカーの部長職、関連会社の役員と、気楽なサラリーマン人生を歩いていた私が、53歳にしてベンチャー経営者の末席に向かってジャンプした。
なぜジャンプの道を選んだのか…と問われれば、正直に言うと「魔が差した」としか言いようがない。今でも、「会社辞めさせていただきます」と衛星電話の600マイルかなたの相手に向かって静かに話しだしたときの、白い雲が綿のように浮かぶ青い空と濃紺の海が頭をよぎるときがある。その時、私が乗る外洋ヨットはゴールデンウイークの休みを利用して小笠原往復の航海の途中にあった。三浦半島を出発して5日目、クリアで穏やかな風にスピードを速め、あと2時間もすれば父島の島影が見えてくるというとき、それまで意識もしていなかった答えがフツと出て、そのまま衛星電話の受話器を取った。
あの時、私は一番幸せなときに最も正しい道を選んだのだと思っている。帰路、一転して低気圧に追いかけられ、寒い北風の中をずぶぬれになりながら3日にわたって走り続けようやく穏やかな海域にたどりついた。おそらく帰路に人生の選択を迫られていたら、きっと安穏な世界を求めたに違いない。それでも私は一度決めた選択を信じた。どちらにせよ航(ゆ)くべき海は変わらないのだから、と。今、私を含め厳しい環境にある多くの経営者にとって、厳しさも安穏も同じ経営という海のうちにあるものと思いたい。
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デフレ経済で厳しい環境にある日本。このコーナーでは、ヨットで鍛えた知力や精神力を武器に、経営の荒波に挑む企業経営者らにエールを送ります。