【アジアの目】全日空「軒を貸して母屋…」の危険性 (2/2ページ)

2011.8.11 05:00

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 LCCから脱却へ

 さらにエアアジアは、単なるLCCからの脱却を目指す。今年開設したクアラルンプール-モルディブ路線は「富裕層をターゲットとした路線」(フェルナンデス氏)で、同様の高級リゾートを結ぶ路線をさらに増やす計画だ。また、ビジネスクラスを充実させ、日本や欧州など長距離路線でのビジネス客の取り込みにも力を入れる。

 7月21日に行われたエアアジア・ジャパン設立会見で、伊東信一郎全日空社長とフェルナンデス氏は共に「新規顧客獲得が中心で、全日空との競合はない」との認識を示した。来年8月から運航する路線についても短距離、中距離が中心だ。

 ただ、エアアジアはこれまで、アジア各地に子会社を設立し、そこをハブとして路線を拡大してきた。日本からの就航計画は明らかにされていないが、同社はかねて米国乗り入れに意欲を示しており、東京がエアアジアの米国への乗り入れ拠点となる可能性もある。いまもドル箱路線の日米間にLCCが本格参入すれば、全日空を含む大手航空会社にとっては大きな痛手となりかねない。

 日本に乗り入れるLCCの多くはカンタスやシンガポール航空など大手航空会社の子会社で、親会社との競合を避けてきたが、独立系のエアアジアには、そうした遠慮はない。

 かつて、マレーシア航空が拠点とするクアラルンプール空港のはずれを借りて営業を開始したエアアジアは、いまや、マレーシア航空を救済するまでになった。エアアジアとの提携が、全日空にとって、軒を貸して母屋を取られるようなことになる可能性もないわけではない。(編集委員 宮野弘之)

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