【ニッポン経済図鑑】あかしや本社 筆づくり 伝統生かし現代風 (1/2ページ)

2012.3.26 05:00

 日本の筆のルーツともされ、大寺院の多い古都・奈良の代表的な工芸品といえば「奈良筆」だ。創業約390年を誇る「あかしや」は、僧侶や書家らが握る伝統的な奈良筆をつくり続ける一方、その技術を生かして現代風の上質な化粧筆も製造している。本社の「筆ショールーム」は筆づくりの実演が見学できるほか、書道筆から化粧筆まで多彩な品々が飾られている。

 あかしや本社は、唐招提寺や薬師寺がある西の京地区東側にある。2010年に完成したという新社屋に入ると、筆の製造会社とは思えないような明るくオシャレなショールームに驚く。

 さまざまな獣毛を使った大小の書道筆が並んでいる。なかには、螺鈿(らでん)(貝殻を使った装飾)が施された豪華な筆や、春日大社で使われたという「鹿の巻筆」もあり、さながら筆の博物館のようだ。一方、アイシャドーやリップ、パウダーなどのブラシもずらり。化粧品店のようで若い女性も楽しめる。

 「もちろん老舗ののれんは大切にするが、書道だけでは客層が限られるので、発想の転換が必要です」と水谷豊社長。奈良筆の技術を守りつつ、新しい客層の開拓を目指している。

 あかしやは江戸時代に職人が奈良・三条通りで筆づくりを始めたのが創業とされ、東大寺など大寺院に筆を代々納め、現在も薬師寺写経道場などで使われる筆はあかしや製という。

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 ■化粧用など新たな顧客開拓

 筆は古代に中国から伝来し、日本でもつくられるようになったという。ショールームの奥では、伝統工芸士の松谷文夫さんが筆づくりを実演してくれた。

 奈良筆はウマやヒツジ、イタチなどの獣毛を丹念に混ぜ合わせ、絶妙の穂先に仕上げる。毛もみや先そろえ、練り混ぜ、芯立てなどの工程を経て、次第に筆の姿になっていく。焼きごてで穂を固め、麻糸で締めると穂が完成。穂は毛質で大きく左右されるうえ、熟練した職人の細かな手作業が欠かせない。