建築用ガラスを供給する旭硝子の鹿島工場は、鹿島臨海工業地帯のほぼ中央にある。工場の心臓部といえる「フロート窯」が置かれた建屋に足を踏み入れると内部は薄暗く、蒸し暑い。約600メートルにわたり、いくつもの工程が真っすぐに連なる光景に圧倒された。
板ガラスの製造は、主成分のケイ酸を多く含んだ珪砂(けいしゃ)やソーダ灰などの原料を巨大な溶解炉に投入し、1600度の高温で溶かす工程から始まる。
溶けたガラス原料は「フロートバス」と呼ばれる成形の工程に流し込まれ、ガラスより比重の大きなすずの上に浮いて平らに広がる。溶融した金属の表面は重力の働きで水平となるため、ガラスも自然と厚みが均一な状態に仕上がっていく。
「ガラス素地が流れるスピードを上げたり下げたりすることで、厚さを3~25ミリの間で調整できる」(鹿島工場の吉門満博ガラス部長)という。
平らに成形された熱いガラスは「徐冷(じょれい)」という工程で、ゆっくりと冷やされる。内部にひずみや、ゆがみを生じさせない重要な工程を経て、板ガラスの完成製品へと近づいていく。
最終段階では洗浄して乾燥させた後、気泡の有無を専用のカメラで入念に検査。表面に割れ目を入れて切断し、一定の枚数ごとにまとめ、工場の別工程などに出荷される。