役員サイドも開発にゴーサインを出した。特に志賀俊之COO(最高執行責任者)、営業を担当する片桐隆夫副社長らが、一度は廃止したブランドを復活させる意義を、他の役員にも説得する役割に回った。ただし、役員サイドの総意として「やるからにはできるだけ早くつくれ」との注文がついた。
長谷川さんが掲げた5代目にあたるシーマの開発コンセプトは、「最新技術の採用」と、国内専用車として「日本の道にあった高級車」の2つ。
最新技術は、日産の最新技術である1モーター2クラッチのHVシステムを取り入れ、「HV専用車にする」(長谷川さん)ことが答えとなった。シーマの歴史を考えれば、V型8気筒のガソリンエンジン、4代目の4500ccや、米国のインフィニティMで使われている5600ccも選択肢にはあった。だが、「輸入車を含め、高級車でも燃費性能を重視するようになっている」とHV専用車の道を選んだ。
さらに、高級車としての造り込みにも取り組んだ。そこには、製造を担当する栃木工場(栃木県上三川町)が「想定以上の力を発揮」(長谷川さん)した。もともと「こうしたい、ああしたい」という要望を持つ開発に対し、生産部門は「生産効率を落とすことはできない」と、相反するのが新車開発の常だった。