東京外国為替市場で円と中国の人民元との直接取引が6月1日に始まってから約1カ月が過ぎた。東京市場の取引量は1日当たり10億元(約125億円)前後で推移しているが、米ドルと元を交換する香港市場の1割程度にすぎない。企業の利用も少なく、盛り上がりは今ひとつだ。一方で、金融業界では新たな関連サービスが登場するなど、直接取引の開始に商機を見いだす動きも出始めている。
東京市場では直接取引の開始後、1日当たり10億元前後の取引が続いている。直接取引開始前のドルを介した取引と比べ数倍に伸びたが、80億ドル(約6400億円)規模とされる東京市場での円・ドル取引と比べれば、取引量はわずか。参加者はほぼ3メガバンクが中心で、銀行同士の売買がほとんどを占める。
三菱東京UFJ銀行エマージング通貨トレーディング室の西仲崇行室長は「3メガ以外の参加金融機関がなかったこともあり、取引量は思ったよりは伸びていない。市場拡大にはまだ時間がかかる」と指摘する。
とはいえ今後、取引量が増加すれば、ドルを介さない分、為替取引コストが低減ができるため、「様子見ながらも企業の興味は徐々に高まりつつあり、問い合わせも増えている」(みずほコーポレート銀行)。
このため、元に対する企業や投資家らの関心が高まることをあてこみ、新サービスなどで顧客開拓を図ろうとする動きが広がっている。
インターネット専業のじぶん銀行は今月3日から、元預金の取り扱い時間を平日午前10時半~午後4時半から、午前9時~翌日午前0時に拡大した。使い勝手を高めるとともに、「直接取引の開始で高まる人民元の認知度を追い風にしたい」(同行)と、金利優遇キャンペーンも実施している。