実は、企業経営の現場ではすでに再生支援のニーズが顕在化している。トーマツグループでは、この半年間の企業再生相談件数が以前の約2倍に急増。新日本の南波秀哉シニアパートナーは「持ち込まれる案件数が足元で、1年前と比べて2、3割多い。年末には駆け込みも増えていくのではないか」と話す。企業再生に道筋をつけるには少なくとも数カ月かかり、早めに着手する必要があるためだ。
「かつては財テクや不動産投資の失敗で行き詰まる企業が多かったが、現在は本業で不振に陥るケースが目立つ」(デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーの伊藤雅之パートナー)といい、返済猶予法の支えで、景気悪化や円高の逆風をしのいでる企業も多いとみられる。
成長可能性の最大化
このため、猶予法を延長しない方針を決めた金融庁も、来年度の中小企業の資金繰り環境への危機感を強めており、中塚一宏金融担当相は今月1日に開いた全国財務局長会議で、倒産の増加が生じないよう金融機関に資金供給を促す姿勢を強調。同時に、経営改善のコンサルティングなどで事業再生を活発化させる方針を示した。