一方で、日本の底力に対する信頼は揺らいでいない。たとえば、日本が得意とした「すり合わせ」技術は、もはやオープン化、標準化が進む現代においては時代遅れの競争優位にすぎないとの議論があるが、雨堤氏はそれを一笑に付す。日本のものづくりの技術を生かせる分野はまだまだあるというのだ。
研究所を見学して感じたのは、見る者を圧倒するような、いかにも「最先端」といった雰囲気ではなく、いってみれば「手作り感」だった。
電池の組み立て工程の改善を目指し、いろいろな組み立て方をあれこれ試すための機械があった。われながらばかばかしいと思いつつ、こんな感想が口に出た。「いかにも創意工夫、という感じですね」
「そりゃそうでしょう。それがなかったら、ものづくりはおしまいですよ」。雨堤氏はあきれたように笑いつつ、こう指摘した。