国を超えて適地を求める企業活動が、グローバル化の進展で大規模化したのだ。クックCEOは昨年末、パソコンの一部製品を米国内で再び生産すると表明したが、形ばかりの世論対策と見る向きは強い。納税という根本的な国民の義務からも逃れるアップルはいまや、多国籍から無国籍企業と化しつつある。
国家の側からは許されることではない。租税を吸い上げて国民に配分する機能は、どんな小さな政府を主張するリバタリアンでも認める国家の独占事業だ。さまざまな租税回避に歯ぎしりしながらも、これまでは見逃してきた。巨大グローバル企業に対する一連の糾弾は、限界点を超えた国家による戦いののろしだ。
とはいえ国家単独ではもう、国家間をまたぐ企業活動を捕捉しえない。とりあえずは経済協力開発機構(OECD)や欧州連合(EU)など既存の国際組織を通じて穴埋め努力をしていくが、いずれ国際税務を担う専門組織も必要となるだろう。