希少金属(レアメタル)を産業排水から回収する技術に挑んできた森下仁丹が、大阪府立大学の小西康裕教授らと共同で、微生物入りバイオカプセルを開発した。カプセルを排水に投入すると、レアメタルが微生物に吸着。その状態でカプセルごと焼却するとレアメタルが取り出せるという仕組みだ。実現すれば「水に近い濃度の排水でも確実にレアメタルを回収できる」(同社)ため、価格高騰や政治リスクで調達に苦慮する日本の製造業に恩恵を与えそうだ。
微生物を運ぶ工夫
開発の始まりは2008年。小西教授が、ある微生物はpH(水素イオン指数)を調整すると工業廃水から特定のレアメタルを吸着することを突き止めた。
問題は、生きた微生物をどうやって排水へ運び、吸着したレアメタルをどう分離するか。そこで白羽の矢が立ったのが森下仁丹のカプセル技術だった。
微生物を排水まで運ぶのに、直径4ミリのバイオカプセルを使用している。銀粒の口中清涼剤「仁丹」から発想を得た継ぎ目のない「シームレスカプセル」と呼ばれるもので、1993年発売のサプリメント「ビフィーナ」にも使われている。
ビフィーナの商品コンセプトは生きたビフィズス菌を腸に直接届ける。バイオカプセルも生きた微生物をそのまま産業排水に送り込むことなので一致するが、そのままでは実用できなかった。