新型車の企画が立ち上がったのは11年ごろ。コンセプトは「悪路でも運転しやすい腰高の車を作れ」だった。開発に携わった第一カーラインチーフエンジニアの高橋正志さんは「どうせ作るなら、今までにない車を作りたかった」と振り返る。
軽自動車は限られた規格のなか、各社がギリギリまで燃費性能を引き上げ、徹底的に車内空間を広げて競争するストイックな分野だ。実用性の高さが評価され、13年度の販売台数は約226万台と過去最高を更新した。
とはいえ、各社が燃費競争に血道を上げる中、「遊び心が欠けていた」(鈴木会長)のは否めない。車から離れていく若者たちをひき付けられるワクワクする車を作りたい。そんな思いが、開発チームに共有された。
もう一つ、新しい市場の開拓を狙いたかった。近年の軽市場は室内空間が広いワゴンタイプが全体の7割を占め、商用バンなど他のタイプは残り3割にとどまる。室内が広い軽SUVを世に出せば、市場開拓につながるのではないかと考えたのだ。
ただ、新型車を一から開発したのでは時間がかかる。幸いスズキには室内の広さや燃費性能に定評がある主力のハイトワゴン「ワゴンR」があった。開発チームはこの車をベースにSUV風の味付けを加えることで、完成度と開発期間の短縮との両立を図り、デザインなどの味付けに集中することにした。