【ITビジネス最前線】賢い電話のばかげたアプリ「Yo」

2014.6.24 05:00

当初はアプリに何の目的もないという理由から米アップルが「Yo」の承認を拒否。再申請の結果、ようやくiPhoneユーザーが利用できるようになった(ブルームバーグ)

当初はアプリに何の目的もないという理由から米アップルが「Yo」の承認を拒否。再申請の結果、ようやくiPhoneユーザーが利用できるようになった(ブルームバーグ)【拡大】

 ■iPhone無料アプリトップ5に

 シンプルなアプリが人気を呼んでいる。ダウンロード数は50万以上で、先週の時点で米アップルのアップストアで無料アプリトップ5にランクイン。最近、100万ドル(約1億200万円)以上の出資を受けた。

 アプリの名前は「Yo(ヨー)」といい、その機能はただひとつ。アドレス帳の連絡先に「Yo」という言葉を送るだけだ。すでに、400万回以上もこのメッセージが送信されたという。

 ◆機能はただひとつ

 「Yo」は、日本語の「よう」や「おい」と同じように、親しい間柄での挨拶や、注意喚起に用いられる呼びかけの言葉だ。アプリには、「Yo」と送る以外に用途はない。スマートフォンでアプリを開くと、電話帳のデータが読み込まれて、その中からメッセージを送りたい人を選ぶだけ。

 相手は通知アラートとともに「Yo」という電子音の呼びかけを受け取る。相手側もこのアプリをインストールしていることが送信の条件だ。

 彼女に「おはよう」の挨拶をしたいときも、友達に明日の待ち合わせのことで電話をかけてほしいときも、家族に仕事が終わったという連絡をしたいときも、「Yo」と一言送れば足りる、ということのようだ。

 「Yo」は、イスラエルのソフトウエア開発会社、モブリによってサイドプロジェクトとして始められた。

 モブリはもともと、ビデオや写真共有プラットホームを提供するイスラエル発の有力スタートアップで、インスタグラムの競合ともされる。彼らは、社内でコミュニケーションをとるためのシンプルなツールが欲しかったといい、Eメールを送ったり電話をかけたりする代わりに「Yo」の一言で相手の注意を引くことを思いついた。

 しかし、最高経営責任者(CEO)のモシェ・オゲグ氏が、社内の開発者、オア・アーベル氏にこのアイデアを伝えたとき、アーベル氏はその依頼を断った。アイデアがあまりにもばかげていて、誰も使わないと主張したという。数週間開発を渋ったアーベル氏だったが、とうとう根負けしてこのアプリの開発に取り掛かった。

 ◆開発わずか8時間

 その8時間後には、「Yo」が完成した。アプリは、オゲグ氏の想像を上回る出来栄えで、ログインも必要なければ、Eメールアドレス、ツイッターやフェイスブックのアカウントを尋ねられることもない、非常にシンプルな作りだった。インターフェースはカラフルで美しく、電話帳から読み込んだ連絡先の名前が表示され、それをタップするだけで操作は完了する。

 しかし、その単純すぎる作りから、最初にアップストアに申請された4月1日には「Yo」はアップルから承認を拒否された。アプリに何の目的もないという理由からだった。オゲグ氏は再申請を試み、ようやくiPhone(アイフォーン)ユーザーがこれを利用できるようになった。

 はじめはモブリの社員20人が社内での利用のためにインストールし、オゲグ氏はその利用をあまり広めないようにと社員に伝えていた。しかし、すぐにイスラエルで人気を集め、最初の1カ月で2万人のユーザーを得た。

 ほとんどジョークのように始まったプロジェクトが、発案者と開発者の予想を上回る勢いで広まっていった。ユーザーはこのシンプルなメッセージを送る行為に中毒性があるかのように、「Yo」を送り続けた。

 しかし、その後本格的にアプリの人気に火が付いたのは、5月初旬に米国人テック・ブロガーのロバート・スコーブル氏がテルアビブにあるオゲグ氏のオフィスを訪ねたことがきっかけだ。

 スコーブル氏が自身のフェイスブックに「Yo」について投稿すると、すぐにサンフランシスコのコミュニティーで口コミが広がった。オゲグ氏がその反応に驚いたのは言うまでもない。米国の有名投資家たちが出資を持ちかけるまでにそれほど時間はかからなかった。

 ◆米有名投資家ら出資

 機能というほどの機能も持たない「Yo」は120万ドルの資金提供を受けたが、投資家たちはもっと出資したいと考えていたようだ。アーベル氏率いる「Yo」のチームは、資金を集めすぎて実現できない約束をするようなことはしたくなかった。

 投資家の要請を受けてチームがアプリの利用状況とエンゲージメントに関する統計を集めたところ、そのエンゲージメント率は非常に高く、多くのユーザーがアプリにのめり込んで、継続的に利用していることが分かった。

 スマートフォン用アプリは、いくら多くの人にダウンロードされても、ユーザーの利用率を高め、利用期間を長くするのは非常に難しいとされる。ユーザーのアプリへの忠誠度を高めるために、アプリのゲーム化(ゲーミフィケーション)というマーケティング手法にのっとってアプリが開発されることも多い。

 しかし、アーベル氏はわざわざそんなことを考えるまでもなく、結果的にユーザー・エンゲージメントが非常に高いアプリを開発した。

 ただ、8時間という短時間で開発されたこと、そして急成長と突然の注目には代償もあった。アーベル氏が拠点を米サンフランシスコに移して、アプリの本格的なグローバル展開に視線が注がれる中、先週、米ジョージア工科大学の学生らによってセキュリティー上の欠陥が指摘された。全ユーザーの電話番号を取得できるほか、ユーザーに偽のメッセージを送ることもできたという。

 すでに、システムは改善されてこの脆弱(ぜいじゃく)性への心配はなくなっているが、いずれにしてもユーザーについてアプリが知っているのは電話番号だけであり、それほどの脅威はないだろう。はっきり言って「Yo」の将来性はまだ誰にも分からない。それでもチームにとって、幸運にも舞い込んだユーザー数の急増を収益に結び付ける方法を考えるのに、今回の出資は十分だといえる。日本でも、「おい!」アプリを開発すればはやるだろうか。

 文:イジョビ・ヌウェア

 訳:堀まどか

                   ◇

【プロフィル】Ejovi Nuwere

 イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者の一人。ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。

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