■進む社会の匿名化に懸念
放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会が6月に発表した「テレビのニュースでは『顔出しインタビュー』を原則とすべきだ」とした談話が話題を呼んでいる。肖像権の侵害や、モザイクをかけなかったことで生じた被害などを指摘してきた同委員会が、この種の見解を示すのは初めて。一方、「現場を知らない意見だ」とする批判も起きている。三宅弘委員長に談話の狙いなどを聞いた。(本間英士)
--談話を発表した理由は
「近年の日本のニュース番組や情報番組について、バラエティー番組に引きずられてボカシが頻繁にかけられたり、取材への抵抗が少ない安易な『顔なし』取材が多くなっていると感じている。犯罪の報道など、確かにボカシが必要な場合もあるが、報道の在り方として注意喚起する必要があると考えた」
--なぜこの時期に
「顔なしでインタビューした内部告発者が資料を捏造(ねつぞう)していた朝日放送の『大阪市長選関連報道』(平成24年2月)など、近年、立て続けに顔なしのインタビューの弊害が出てきた。本来顔出しで放送できるような取材の仕方をしていたら、こういうことには至らなかったのではないか」