積水化学工業が開発し5月に発売した水処理膜システム「フィルチューブ」は、処理膜の点検や交換など大掛かりだった作業を容易にした製品として注目を集めている。難関だったエネルギーコストの問題も、独自開発した膜の素材で解決に導いた。
◆塩化ビニール系樹脂採用
「われわれが提案する槽外型の処理膜は、排水向けとしては他にないといっていい」
こう説明するのは、水浄化事業推進グループの大杉高志グループ長。フィルチューブは、従来の中空糸よりも大きい内径4ミリの開口部を持ち、表面に空いた0.04マイクロメートルの穴で濾過(ろか)する。この穴は大腸菌やウイルスを通さず、これらを除去できるという。
大杉氏によると、水処理膜を使った排水処理設備は、汚れを反応させるのに使う微生物を入れたタンクの中に処理膜を沈める槽内型が主流だ。だが膜のメンテナンス時に、タンクから膜を引き上げる必要がある。大杉氏は「タンクの上での作業は危険で、実際に作業員がタンクの中に落ちたりすることもある」と指摘する。
これに対し槽外型は、膜を洗うにせよ交換するにせよ、タンクの外に最初から処理膜があるため、槽内型のような手間もトラブルも起きない。さらに追加の設置も可能なため、処理能力を上げることも容易という。
にもかかわらず槽外型が使われてこなかったのには理由があった。槽外型はいったん、タンクの外に水を出さなくてはならず、そのためのエネルギーが必要になる。つまり「エネルギーコストがかかるから」と大杉氏は説明する。だが開発したフィルチューブは、非常に小さい圧力で水を回して濾過できる省エネ設計のため、エネルギーコストを抑えることが可能になるという。